不動産売買の際に発生する仲介手数料の仕組みは、不動産の初心者にとっては少々わかりにくいかもしれません。しかし、不動産取引は数千万円単位という規模になり、たとえ数%の手数料であったとしても、場合によっては無視できないコストになります。
介手数料の内訳や基本相場、計算方法などをより実践的にシミュレーションして、実際の不動産取引において参考にしてみてください。
不動産売却時にかかる手数料を知っておくメリット
不動産取引において支払うことになる仲介手数料は、不動産業者によってばらつきがあります。おおよそのところ5%~10%が基本相場だと言われています。パーセンテージは少ないものの、不動産は物件の価格そのものが高額なので、仲介手数料だけで数十万円、数百万円単位のコストが上乗せされることになります。
あらかじめ予算の中に組み込んでおかないと、予期せぬ予算オーバーになりかねません。仲介手数料の基本相場、計算方法について詳しく把握しておくことによって、不動産取引において必要になるトータルコストを、より具体的にシミュレーションすることができ、予算オーバーになってあわてるということもありません。
また、手数料のシステムを知っておくことで、「後悔しない業者選び」につなげることもできます。もちろん、ほとんどの不動産会社は良心的で、基本相場に沿った水準の仲介手数料を掲げています。しかし、一部の不動産会社は手数料のパーセンテージを曖昧にしたり、相場を大きく超えた法外な手数料を請求したりしているところもあります。
不動産取引における仲介手数料は仕組みがやや複雑で、専門知識を持っていなければわかりにくいため、このような悪質な運営が横行してしまうのです。不動産取引に先立って、仲介手数料について詳しく把握しておくことで、業者との交渉材料にもなり、トータルコストを引き下げる工夫にもつながります。
不動産売却の仲介手数料とは
不動産物件を売る際も、原則として仲介手数料は必須ですが、具体的にどのようなシステムになっているのでしょうか。「仲介手数料とは何か?」という、そもそもの仕組みから内訳や支払いのタイミングまで、仲介手数料の基礎知識について見ていきましょう。
仲介手数料とは何か
不動産取引における仲介手数料は、取引を媒介する不動産業者に対して支払うコストで、手間賃のようなものです。仮に、仲介手数料がまったく存在しなければ、不動産業者には取引において1円も報酬が入らないことになり、業者は利益を得ることができません。仲介手数料は不動産業者に対する成功報酬であるといえるでしょう。
不動産取引における仲介手数料には、「両手仲介」と「片手仲介」の2つのパターンがあります。両手仲介では、物件の売り手と買い手双方から手数料が徴収されます。売り手にとっても手数料の負担がかかるため、トータルコストがやや割高になりますが、その分手厚いフォローが受けられる傾向にあります。
一方、片手仲介では、物件の売り手や買い手のどちらか一方からのみ、手数料が徴収されます。ほとんどの場合は、買い手側から手数料が徴収される仕組みとなっており、売り手側からすれば、手数料はほぼノーコストで利用できるように見えるかもしれません。しかし、実際には別の形できちんとコストが転嫁されていることは知っておきましょう。
仲介手数料はいくらか
法律上、仲介手数料には一定の上限が設けられています。仲介手数料の上限は、「物件の売却価格+3%+6万円」ということになっており、ほとんどの業者はこの上限いっぱいまで手数料を設定しています。不動産取引における仲介手数料には、片手仲介と両手仲介がありますが、いずれの場合も売り手側が納める手数料分のコストは同じです。
ただし、不動産業者の立場から見れば、当然片手仲介よりも両手仲介のほうが、より多くの手数料収入が得られる仕組みになっているため、99%以上の不動産業者は両手仲介を採用しています。
また、ここ数年は仲介手数料完全無料をうたう業者が増えていますが、手数料が無料になったからといって、その分だけトータルコストが抑えられるわけではありません。そのような業者は、手数料分のコストをまったく別の項目として転嫁していたり、アフターフォローにあまり手間をかけていなかったりすることが考えられます。
そういったカラクリを頭に入れたうえで、本当の意味で仲介手数料がお得になるパターンについて、シミュレーションしておきましょう。
何のための費用なのか
仲介手数料の内訳としては、手数料本体以外に不動産物件の広告費用、宣伝PR費用、スタッフの人件費などが含まれています。最近では、インターネットを通した宣伝活動が主流になっており、当然、それらの費用についても、仲介手数料のコストとして上乗せされることになります。
言い換えれば、物件の宣伝を多方面に幅広く行っている不動産業者ほど、仲介手数料のベースが高いということになります。仲介手数料分のコストを少しでも節減したいのであれば、業者の宣伝活動にも注目し、宣伝コストを抑えている業者を選ぶのがポイントです。
不動産売却の主な費用
不動産売却にかかる費用には、仲介手数料の他にも必要なものがありますが、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。中には必ずしも必要ではない費用もありますが、次に挙げる費用は多くの場合に必要になる費用です。不動産売却で必要になる主な費用について解説します。
費用一覧
主な費用の一覧は次の通りです。
項目 | 解説 | 必要な費用の目安 |
不動産登記費用 | 抵当権抹消登記にかかる費用です | 5,000円~2万円程度 |
印紙税 | 売買契約書に貼る印紙代 売却金額によって変わる | 1,000円~6万円 |
ローン返済費用 | ローン繰り上げ返済のための金融機関への手数料 | 1万円~3万円 |
不動産登記費用
売却する直前までローンを支払っていて、売却したお金で一括返済する場合もあります。金融機関からローンを借りるためには、ローンの対象となっている不動産を担保にしなくてはいけません。金融機関が不動産を担保にする権利が抵当権です。抵当権は法務局へ登記されています。
不動産を売却するためには、ローンを完済して抵当権を外す必要があります。抵当権を外すための手続きが抵当権抹消登記です。抵当権抹消登記は不動産の物件1件につき1,000円の費用が掛かります。土地と建物なら2件分の登記で2,000円になります。
司法書士に依頼する場合には、司法書士への報酬も必要なので、合計で5,000円~2万円程度になります。
印紙税
不動産の売買契約書を交わす際には、収入印紙を契約書に貼り、印紙税を納めなくてはいけません。契約書に記載された金額によって税額が次のように変わります。
契約書に記載された金額 | 印紙税 |
10万円超~50万円以下 | 400円 |
50万円超~100万円以下 | 1,000円 |
100万円超~500万円以下 | 2,000円 |
500万円超~1千円以下 | 1万円 |
1千円超~5千円以下 | 2万円 |
5千円超~1億円以下 | 6万円 |
5億円超~10億円以下 | 20万円 |
10億円超~50億円以下 | 40万円 |
50億円超~100億円以下 | 60万円 |
ローン返済費用
売却する不動産のローンを直前まで支払っていて、売却するために一括して残債を繰り上げ返済する場合もあります。繰り上げ返済で一括返済した場合には、金融機関へ手数料を支払います。繰り上げ返済の手数料は金融機関によって違います。
近年では手続き方法で手数料が変わる場合もあります。窓口で手続きする場合が一番高く、電話での手続き、ネットでの手続きの順に安くなっていきます。例えば三菱UFJ銀行では、窓口が3万3,000円、テレビ窓口が2万2,000円、ネット手続きが1万6,500円です。
ローンを借りている金融機関では手数料がどのくらいかかるのか、ネットからの手続きなら安くなるのか確認して、あまりお金をかけずに済む方法を見つけましょう。
不動産売却で場合によっては必要な費用
不動産売却をする上では、前の章で見た費用の他にも、場合によって必要になる費用があります。どのような費用がどのくらい必要になるのかお伝えします。
費用一覧
項目 | 解説 | 必要な費用の目安 |
所得税 | 売却益が出た場合には譲渡所得となり所得税が課税される | 所有期間が5年以下なら譲渡所得の約4割 5年超なら譲渡所得の約2割 |
引越し費用 | 新しい家へ引越すための費用 | 距離と荷物の量、家族の人数によって大幅に変わる |
測量費 | 土地の売却では境界線を明確にするための測量が必要な場合がある | 確定測量なら60万円~80万円 |
解体費 | 古い家を解体して更地にするための費用 | 坪4万円~8万円程度 |
所得税
不動産を売却したことで利益が出た場合には、譲渡所得となります。ただし、売却益から売却のため手数料を差し引いた手元に残った金額が売却益ではありません。その不動産を手に入れたときの、不動産価格と手数料の合計を差し引いて、さらに利益が残った場合にのみ、譲渡所得となり、所得税と住民税を支払わなくてはいけません。
譲渡所得の計算方法は次の通りです。
譲渡所得=売却価格-売却手数料-購入費用-購入手数料
さらに売却した不動産が自宅だった場合には、住んでいた年数によって所得税と住民税の合計の税率が次のように違います。
居住年数 | 所得の種類 | 税率 |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63% |
5年超から10年以下 | 長期譲渡所得 | 20.315% |
10年超 | 長期譲渡所得マイホーム特別減税 | 14.21% |
所有期間は1年の中のどの時期に売却しても、売却した年の1月1日でカウントされます。5年超、10年超が微妙な場合には、1月1日をまたいで5年もしくは10年を超えると税率が大きく変わってくるのでよく注意しましょう。
引越し費用
自宅を売却して住みかえる場合には、新しい家に引越すための引越し費用も必要です。引越し費用は移動距離と、荷物の量で変わります。近場への一人暮らしの引越しなら2万円程度から依頼できます。家族の人数が多くなり、距離が遠くなればなるほど費用は高くなります。
3人以上の家族なら、半径100km圏内の引越しで10万円以内、半径200km圏内の引越しで20万円程度見積もっておきましょう。また、引っ越しに伴い家族の移動費用も必要です。こちらもあらかじめ計算しておきましょう。
測量費
土地を売却する場合には、境界線を確定した土地でなければ後々のトラブルに発展しかねません。というのは、土地の値段は土地の面積によって変わるためです。契約書に記された面積よりも小さいことが後々わかった場合には、代金の返金を求められることもあります。
測量方法には、現況測量、確定測量とありますが、土地の面積を正確に割り出すためには確定測量が欠かせません。確定測量とは、隣接する土地の所有者立会いのもとで、境界線を確定して測量して、正確な面積を計算します。
確定測量をするためには、土地家屋調査士に依頼をし、隣の土地の所有者にも立ち会ってもらわなくてはいけません。時間も手間もかかりますが、費用もそれなりにかかります。100万円程度見積もっておく必要があります。
解体費
家を壊して、更地にした土地だけを売却する場合には、解体費用は売主が負担します。解体費用は、家の建材によって次のように違います。
家の建材 | 解体費用 |
木造 | 坪4万円~5万円 |
軽量鉄筋造 | 坪6万円~7万円 |
鉄筋コンクリート造 | 坪7万円~8万円 |
柔らかい木造の家は比較的安くて、合計で100万円~150万円程度です。建材が固くなるにつれて金額が高くなり、最も頑丈な鉄筋コンクリート造りの一軒家の場合には250万円~300万円ほどかかります。
手数料・費用を抑える方法
不動産を売却するためには、上記の通り様々な費用が掛かります。土地の測量と、家の解体が必要な場合には、その費用だけで200万円以上がかかります。また、仲介手数料も売却金額が高くなればなるほど、支払い金額も大きくなります。
お金のために不動産を売却するのであれば、できるだけ手数料や費用を抑えて手元に残る金額を大きくしたいものです。そこで、こちらでは不動産売却にかかる手数料や費用を抑える工夫について解説します。
不動産売却時の仲介手数料の値引き交渉について
不動産取引において、不動産会社に対して仲介手数料の値引き交渉を行うのは許されるのでしょうか。結論から言うとOKですが、あくまでも「法律上は問題ない」というレベルの話で、どのような取引であっても不動産物件の値引き交渉が有効であるというわけではありません。そこで、仲介手数料の値引き交渉を行うデメリットや、交渉するべきタイミングについて解説します。
値引き交渉を行うとデメリットもある
仲介手数料の値引き交渉は、物件の売り手側にとっては無条件にメリットがあるように思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れない部分があります。
不動産業者としても慈善事業ではないため、やはり利益を重視して、仲介手数料の値引き交渉を早期に行ってくる売り手に対しては、優先度を下げてしまう可能性があります。優先度が低いということは、対応が遅れてしまうということでもあり、スピーディに状況把握が求められる不動産取引では、売り手側にとっては不利になってしまいます。
値引き交渉のタイミングは?
値引き交渉をあらかじめしようと決めているのであれば、できるかぎり早い段階で交渉に移ったほうがメリットが大きくなります。具体的には、媒介契約を結ぶ前に交渉をはじめて結果を出しておくことが望ましく、その段階で値引きが難しいようであれば、他の不動産業者をリサーチすることもできます。
売買契約の段階で値引き交渉を行うのでは、タイミングとしては遅すぎます。売り手からの仲介手数料が値引きされた場合は、不動産業者としてはその分のコストを買い手側に転嫁しようとします。そのため、一方的な都合によって売り手が仲介手数料の値引き交渉を行えば、買い手側に大きな迷惑をかけてしまう可能性があります。
控除を利用する
自宅を売却する場合には、譲渡所得に対して控除が受けられます。国税庁のマイホームを売った時の特例により、3,000万円までの譲渡所得が控除の対象です。3,000万円までなら、所有期間の長さに関係なく、所得税がかかりません。
例えば、3,000万円で購入した家が4,000万円で売れたとしましょう。すると1,000万円の譲渡所得が発生します。この場合には、売却した不動産が自宅であったのなら、マイホームなので特例が適用されて所得税は控除されます。
手数料・費用を抑えるよりも大切なこと
ここまでは不動産を売却するときに手数料を抑える方法をお伝えしてきました。しかし、売却した後で手元に残るお金を多くしたいと考えるのであれば、売却に必要な手数料や費用を抑えるよりももっと大切なことがあります。
それは、より高い金額で不動産を売却することです。不動産の売却価格が高くなれば、当然仲介手数料も高額になります。所得税を支払う必要も出てくるかもしれません。しかし、より高く売れればそうした手数料を支払ったとしても、手元に残るお金が多くなるでしょう。こちらでは、より手元に残るお金を多くするための不動産売却のコツをお伝えします。
売却益を多くする方法1:不動産会社選び
より高額に、あなたが希望する価格で不動産売却を進めたいのなら、不動産会社選びはとても重要です。良心的に顧客の事情に寄り添って、売却活動を進めてくれる不動産会社を選ばなくてはいけません。
不動産会社によっては、自分のところで売却も販売も両方扱い、両手仲介して仲介手数料を両取りするために、他の不動産会社から問い合わせがあっても、断ってしまうことがあります。また、購入希望の顧客にいい顔をするために、売主に法外な値引きを迫ってくることもあります。
不動産会社を選ぶ際には、このような売主の事情を考えないような不動産会社は論外です。良心的にあなたの都合もしっかりと汲んで売却活動をしてくれる不動産会社を選びましょう。
とはいえ、どうすれば良心的な不動産会社を見つけられるのか、わからないという方も多いことでしょう。そこでおすすめなのがすまいステップです。すまいステップとは不動産一括査定サイトで、売りたい物件の情報を登録すれば、近隣の不動産会社4社からの見積もりが届きます。
すまいステップには現在全国1,600社以上の不動産会社が登録されていますが、クレームの多い悪徳業者は定期的に登録から外し、できる限り良心的な良質な会社だけを集めるようにしています。より良い対応をしてくれる不動産会社に出会える可能性が高いので、ぜひ一度すまいステップで一括査定してみましょう。
売却益を多くする方法2:相場を知る
売却益を多くするために大切なことは、あなたが売りたい物件と同じような物件が、どのくらいの価格で売れているのか、地域の相場を知ることです。不動産購入は多くの人にとって一生の買い物なので、購入希望者はチラシや不動産情報サイトなどでかなりの勉強をしています。
相場よりも安すぎる価格で売却に出すのは論外ですが、相場を無視した高すぎる価格で売りに出しても、買い手は付きません。同じ地域で、同じくらいの間取りの同じくらいの築年数の家がどのくらいの価格で売れているのか、不動産情報サイトなどで調べてみましょう。
案外、あなたが考えている価格よりも高い価格が相場であることもあります。地域の適正価格で売却することで、手元に入ってくるお金を多くできることもあります。
なお、すまいステップで一括査定をしてもおおよその相場がわかります。すまいステップで査定は簡易査定ですが、その地域で不動産売買をしている不動産会社なので、地域の相場を理解した上で査定額を出してくれます。すまいステップの一括査定で4社からの見積もりを取るだけでも、おおよその相場がわかります。ぜひ活用してみましょう。
不動産売却なら一括査定サイトがおすすめ
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不動産会社選びは手数料よりも実力を重視しよう
仲介手数料については原則として、返金が認められません。したがって、仮に売買契約が途中でキャンセルになったとしても、それまでに納めた仲介手数料については、返金されることはないため注意が必要です。
不動産業者選びにおいて重要なことは、「目先の仲介手数料に一喜一憂しない」ということです。確かに、仲介手数料は不動産取引において無視できないコストであり、最低限に抑えるテクニックは必要です。しかし、手数料にこだわりすぎると、肝心のサービスやアフターフォローの質が見えにくくなってしまうというリスクもあります。
まずは、サービスの質や取引実績を参考にしたうえで業者をピックアップし、そのうえで可能な範囲の値引き交渉を進めていくことをおすすめします。