祖父母や両親から不動産を相続した方は、手続きや相続登記を行わないといけません。相続した不動産が不要なものなら売却する方法もあります。不動産をそのままにしている、または相続を受ける予定がある方は、手続き方法を確認しておくことでスムーズに売却ができます。
ここでは、相続した不動産を放置しておくのではなく、不動産を損をせずに売却するための流れをご説明します。売却にともなう費用を把握し、かかる税金をなるべく抑える方法もあるので、確認しておくことで損なく売却できます。
不動産売却について知りたい方は、 「不動産売却にかかる期間と売却に影響するポイント」 の記事をご覧ください。
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不動産の相続手続きにかかる費用
相続手続きには諸費用が発生します。自分で手続きを行う場合でも費用は発生しますが、手続きが面倒なかたは司法書士に依頼することもできます。この場合には手数料も発生します。また、相続人の人数によって費用が変わることも把握しておきましょう。
調査にかかる費用 | 5,000~20,000円 |
登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4%(下3ケタ切り捨て) |
司法書士に依頼した場合の費用 | 60,000~100,000円 |
相続税 | 固定資産税評価額×0.4% |
その他 | 取得書類の郵送費 400~500円程度 |
登録免許税
登録免許税とは不動産を登記するときに課税される税金です。不動産登記とは、不動産の権利関係を明確にして、法務省に届け出ることです。土地でも建物でも、不動産には様々な権利が発生します。どこにあるどのくらいの大きさの土地や建物の、名義人は誰で、その土地を担保にしてどこからいくらお金を借りているのか、ということを、誰でも閲覧できるように法務局に届け出て記録するのが不動産登記です。
不動産を相続した場合には、不動産の名義人を変更するので、相続登記が必要です。相続登記をすると登録免許税を自分で計算して納めなければいけません。相続登記の登録免許税は不動産価格の0.4%です。1,000円未満は切り捨てます。
不動産価格は通常は固定資産税課税標準額で計算します。固定資産税課税標準額が記載された固定資産評価証明書は固定資産税の納付書に記載されているので確認してみましょう。
相続登記には特に期限は設けられていないので、登録免許税にも納付期限はありません。しかし、ある年の固定資産評価証明書を元に登録免許税を計算した場合には、その固定資産評価証明書の年度内(4月1日~翌3月31日)までに納付する必要があります。
司法書士に依頼した場合の費用
登記の手続きには、亡くなった方の出生から死亡までのすべてが記載された戸籍謄本や住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本や住民票、印鑑証明の取得や、申請書の作成、固定資産税評価額の調査など、複雑な手続きが必要です。
素人では難しいところもあるので、司法書士に依頼する方も少なくありません。司法書士に依頼した場合には、司法書士への報酬を支払う必要があります。司法書士の報酬は、依頼する司法書士事務所などによって違います。
通常の相場は、相続登記の手続きだけであれば6万円から10万円以内、遺産分割協議書の作成も同時に依頼した場合には9万円から15万円以内です。司法書士事務所がいくつかある場合には、依頼する前に見積もりを出してみるといいでしょう。
相続税
亡くなった方から財産を相続した場合には相続税がかかります。不動産の評価額も相続税の課税対象となります。相続税の税率は課税対象となる相続額により次の表の様に変わります。また、相続人それぞれの相続額に応じた控除が受けられます。
課税対象となる相続人一人当たりの相続額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超から | 55% | 7,200万円 |
相続税は各自の相続額に税率をかけて算出し、控除額を差し引きます。その合計金額を各自の相続額に応じて案分して支払います。
相続税での不動産の評価について
相続税は亡くなった方から相続する財産の総額で計算します。預貯金や現金、株券など、評価が金額としてわかりやすいものは、そのまま計算すればいいのですが、不動産は土地や建物に金額が貼ってあるわけではありません。
相続税の計算をするときの不動産の評価額の算定は、通常は固定資産税評価額を1.14倍して推計します。固定資産税評価額が土地と建物合わせて5,000万円の場合には次のようになります。
5,000万円×1.14=5,700万円
この金額を他の財産と合計して相続税を算出します。
基礎控除などについて
相続税には基礎控除があります。基礎控除は3,000万円までと法定相続人の人数に600万円をかけた金額です。また、葬儀費用や借金、法律で定められた非課税財産も課税対象から外れます。残された財産から基礎控除や非課税財産などを差し引いた金額が相続税の課税対象となります。
また、相続人が配偶者である場合には1億6,000万円までの遺産に対する相続税は、配偶者控除の対象となり、相続税が課税されません。
相続税の計算例
夫が残した財産から葬儀費用や非課税財産を差し引いた、相続税の課税対象額が2億円で、妻と子供2人が法定相続分通り、配偶者2分の1、子供は残りを人数で分けて相続する場合の相続税の計算方法を見てみましょう。
基礎控除を差し引く | 2億円-(3,000万円+600万×3)=1億5,200万円(課税対象) |
妻の相続額 | 1億5,200万円÷2=7,600万円 |
子供一人当たりの相続額 | 1億5,200万円÷2÷2(子供2人で分ける)=3,800万円 |
妻の相続税 | 7,600万円×30%-700万円=1,580万円 |
子供一人当たりの相続税 | 3,800万円×20%-200万円=560万円 |
相続税合計金額 | 1,580万円+560万円+560万円=2,700万円 |
妻の実質納税額 | 2,700万円÷2=1,350万円 配偶者控除により0円 |
子供一人当たりの実質納税額 | 2,700万円÷2÷2(子供2人で分ける)=675万円 |
相続税の納付期限について
相続税の申告期限は、被相続人がなくなったことを知ってから10か月以内です。申告期限を過ぎてしまうと、延滞税と無申告加算税が課せられてしまうので注意しましょう。
その他
その他、不動産の相続手続きをするためには、調査と書類の取得費用、書類の郵送費などがかかります。
調査とは、相続した不動産に間違いが無いかどうかを確認するための調査です。固定資産税の納付書がない場合には、固定資産評価証明書も取得します。また、相続した不動産に抵当権が付いていないかどうかを確認するために、登記事項証明書も取り寄せます。
不動産の相続手続きをするためには、公的な書類を集めなくてはいけません。必要な書類は亡くなった方の出生から死亡までの流れがわかる戸籍謄本と住民票の除票、全ての相続人の戸籍謄本と住民票と印鑑証明です。遠方の役所から取り寄せる場合には、郵送費もかかります。
調査や書類取得にかかる費用は次の通りです。
必要な書類 | 費用 |
名寄帳 | 1通300円程度 |
固定資産評価証明書 | 1通数百円程度 |
登記事項証明書の費用 | 1通600円 |
亡くなった方の戸籍謄本 | 1通450~700円 |
亡くなった方の住民票除票 | 1通200~400円 |
相続人の戸籍謄本 | 1通450円 |
相続人の住民票 | 1通200~400円 |
相続人の印鑑証明書 | 1通200~400円 |
書類を郵送で取り寄せる場合の往復分の郵送料 | 1件当たり500円程度 |
合計金額は相続人の人数によって大きく変わります。だいたい1万~3万円程度かかることが多いようです。
不動産の売却手続きにかかる費用
遺産相続をスムーズに進めるために、不動産を売却して現金化してから相続手続きを行う場合もあります。不動産の売却にも様々な費用がかかります。こちらでは、相続する不動産を売却する場合に必要な費用について見ていきましょう。
まずは仲介手数料や印紙代など、諸費用はどの程度かかるかを表でまとめました。一般的な費用ですが、不動産会社によっては値引きされることもあり、費用に変動があります。仲介手数料の半額は売却契約時に支払うのが一般的です。
仲介手数料 |
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印鑑証明書交付費用 | 印鑑証明書 1通300円 |
売買契約書に貼る印紙代 |
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仲介手数料
不動産を売却するにあたっては、不動産会社と媒介契約を結び、仲介してもらうことが多いでしょう。購入希望者を探して見つけ、様々な続きを進めるためには、やはり不動産取引のプロである不動産会社にお願いをした方が何かと安心できます。
不動産会社に不動産売却を依頼したら、必ず仲介手数料が発生します。仲介手数料は、不動産売却が成功した場合に成功報酬として支払います。仲介手数料の上限は、上記の表の様に宅地建物取引業法で上限が決められていますが、売値が400万円を超える場合には次の計算式を使います。
仲介手数料=(売買価格×3%+6万円)+消費税
例えば3,000万円で物件が売れた場合の仲介手数料は次のように算出します。
(3,000万円×3%+6万円)×1.1=105万6,000円
なお、この仲介手数料は上限金額なので、不動産会社によってはもっと安く設定しているところもあります。しかし、不動産会社を選ぶ際には、仲介手数料が安いところよりも、誠実に売却活動を進めてくれる信頼できるところを選びましょう。
印鑑証明書交付費用
売主の本人確認を行うために、印鑑証明書の取得が必要です。相続する物件の場合には、相続人の共有名義となるので、相続人全員の印鑑証明書をそろえる必要があります。相続人が遠方に住んでいる場合には、時間がかかる場合がありますが、印鑑証明書の有効期限は3か月なので、期限に注意しましょう。
売買契約書に貼る印紙代
不動産の売却に成功した場合には、買主との間で売買契約書を取り交わします。契約書には、記載される金額に応じた収入印紙を貼り、収入印紙税を納めなければいけません。上記の表を見て、必要な金額分の収入印紙を揃えましょう。収入印紙は、郵便局や法務局で販売しています。
不動産の売却後に支払う税金
不動産を売却したことで、利益が出た場合には、その利益に対して税金がかかります。こちらでは、その利益に対する税金の計算方法について解説します。
不動産を売却したことで生じた所得を譲渡所得といい、譲渡所得に対しては他の所得と分離して所得税と住民税が課税されます。しかし、譲渡所得がマイナスの場合には課税されることはありません。譲渡益に対する税率は、他の所得と異なり、分離課税の税率となります。対象となる不動産の用途や所有期間によって税率が異なります。
譲渡所得税(計算方法) |
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所得税と住民税の税率 | 税額=課税譲渡所得×税率(所得税・住民税) |
譲渡所得税について
譲渡所得とは、不動産を売却した場合の利益のことですが、必ずしも売却金額から売却手数料を差し引いた金額ではないので注意しましょう。その不動産を購入した時の購入金額を差し引いて、利益が出ていた場合に譲渡所得となります。
例えば3,000万円で売却したけれども、被相続人が4,000万円で購入していて1,000万円の損が出ている、という場合には譲渡所得はマイナスとなり、課税されません。
ただし、これは購入時の取得費を証明できるものが残っている場合に限ります。購入時の取得費は次のものの合計です。
- 土地や建物の購入代金、建築代金
- 購入時に支払った税金
- 仲介手数料
- リフォーム費用
- 住宅ローンの借り入れから入居までにかかった利子
これらのものを証明できる書類には次のものがありますが、必ずしも認められるとは限りません。税務署に相談してみましょう。
- 売買契約書
- 住宅ローンの金銭消費貸借契約書
- ローンの償還表
- 抵当権の設定金額が分かる登記の全部事項証明書
- 購入時のパンフレットなど
取得費を証明できる書類を添付できない場合には、売却価格の5%を概算取得費とします。先祖代々受け継がれてきた土地など、もともとの価格がわからない土地の場合でも5%は取得費とできます。また、取得費が5%よりも少ない場合でも5%を選択できます。
所得税と住民税
給料や事業所得、家賃収入など、毎年何らかの所得がある人は、確定申告や源泉徴収で所得税と住民税を支払っています。しかし、不動産売却による譲渡所得の場合には、分離課税といい、通常の所得とは別に計算して、所得税と住民税を支払います。
税率は被相続人がその物件を保有した日から売却が成立した日の年の1月1日までの保有期間で変わります。5年以下なら短期譲渡所得、5年超なら長期譲渡所得となり、所得税は税率が2倍違います。税率は次の表のとおりです。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
所得税の税率 | 30% | 15% |
住民税の税率 | 9% | 5% |
相続した不動産の売却で節税する6つの方法
ここまで見てきたように、不動産を相続すると相続税や所得税、住民税などの税金がかかります。手元に残す財産を増やすためには節税を考えたほうがいいでしょう。
税金には特例措置などがあり、これを見過ごして申告すると余分に納税してしまうこともあります。損なく売却するためにも、節税できるポイントを押さえておくことが大切です。
相続の段階で小規模宅地等の特例
土地を相続したときに相続税を大幅に下げる小規模宅地等の特例があります。小規模宅地等の特例が使える土地は大きく分けて3種類あり、「住宅で使っている土地」、「人に貸している土地」、「事業で使っている土地」があります。
- 特定居住用宅地等
- 貸付事業用宅地等
- 特定事業用宅地等
故人の自宅の敷地が330平米まで80%減額され、一軒家が建っている土地、購入マンションがある土地、二世帯住宅の土地が適用され、どれも個人名義の土地であることが条件となります。
- 一軒家が建っている土地
- 購入マンションがある土地
- 二世帯住宅の土地
不動産を相続してから3年10ヶ月以内で売却
「取得加算の特例」を活用することで、節税することができます。これは、取得費に相続税額を加算してもよいというもので、相続から3年10ヶ月以内(被相続人の死亡日から経過)の売却であることが条件となります。以下の計算式で算出できます。
取得加算する相続税額=相続税額×相続税の課税価格 |
財産の価額÷(相続税の課税価格+債務控除額) |
不動産売却にかかった費用を可能な限り計上
不動産を売却する理由やタイミングは異なりますが、住宅ローンの残債や所有期間によって費用が異なります。売却と同時に住宅ローンを完済する場合、繰上返済手数料や抵当権抹消のために司法書士への報酬が発生しますが、これらは経費として計上できません。そのため、経費として計上できる費用は全て計上し、経費として計上できない費用については、できるだけ費用を抑えることで損せず売却できます。
マイホームの売却で3,000万円の特別控除
不動産売却の際、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。以下は特例を受けるための要件です。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること
- 以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと
特例を受けるための手続きとして、確定申告が必要になります。確定申告書に譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)〔土地・建物用〕を添えて提出しましょう。
- 必要書類:譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)〔土地・建物用〕
空き家になった不動産の売却で特例
被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまる際、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。適用条件と申請方法を下記に紹介します。
- 被相続人居住用家屋及び、被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
【適用を受けるための手続き】確定申告の際、次の書類を添えて提出しましょう。
相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合 |
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相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合 |
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不動産売却で損をしても損益通算と繰越控除
マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例があります。 【適用条件】確定申告書に次の書類を添えて提出しましょう。
- 自分が住んでいるマイホームを譲渡すること。なお、以前に住んでいたマイホームの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
- 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産(旧居宅)で日本国内にあるものの譲渡であること
- 買換資産(新居宅)を取得した年の翌年12月31日までの間に居住の用に供すること又は供する見込みであること
【提要手続き】
損益通算の場合 |
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繰越控除の場合 |
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相続した不動産を売却するときの評価方法
不動産を売却するときには、売主側としては出来るだけ高い価格で売りたいと思いますし、買主側としてはできるだけ安い価格で買いたいと思うのが普通です。
そこで、相続した物件を売却するときには、買主側に買いたたかれないようにするためにも、適正価格をしっかりと把握しておくことが必要です。
適正価格を把握するためには、物件の評価額を正確に知ることが大切です。相続した土地や建物の評価額をどのように算定したらいいのかを解説します。
不動産評価額は土地と建物部分にわけて計算する
不動産には、お店で売っている商品の様に値札が貼り付けてあるわけではありません。特に売買されるときには、その時の相場によって時価がかなり大幅に変動するもので、正確に評価するのは難しいのが現状です。
そこで、まずはどのくらいの評価額が付いているのかを公的な資料から算出します。不動産の評価額は通常は土地と建物で分けて計算します。土地の計算方法と、建物の計算方法をそれぞれ解説します。
土地の評価額の計算方法
土地は一物四価と言われ、同じ土地でも4つの価格、取引価格、公示地価、相続税路線価、固定資産税評価額がそれぞれ設定されています。この中で、取引価格は実際に売却してみないとわからないので、評価額としては利用できません。残りの3つの中から、最も参考になるものは相続税路線価です。
公示地価は、土地の適正価格の目安を公的に算定したものなので、この3つの中で最も取引価格に近いものです。しかし3年に一度しか更新されないというデメリットがあります。相続税路線価は毎年更新されているので、もっともその時の時価に近い評価額を算出できます。
相続税路線価は公示地価の8割程度で設定されているので、次の計算式で土地の適正価格を算出できます。
土地の面積×相続税路線価÷0.8=土地の評価額
路線価が設定されていない場合には、固定資産税評価額から算出します。固定資産税評価額は、公示地価の7割程度に設定されているので次の計算式で評価額を算出できます。
固定資産税評価額÷0.7=土地の評価額
建物部分の計算方法
建物部分の評価方法は、通常は同じ場所に同じ家を建てるといくらかかるのか、再調達原価を計算した上で、経年劣化分を差し引いて評価します。経年劣化分をどのように評価するのかは、その時々で変わりますが、固定資産税評価額の経年減点補正率が参考になるでしょう。
固定資産税評価額の経年減点補正率は木造と非木造で次のようになっています。
経過年数 | 木造 | 非木造 |
1年 | 0.60 | 0.9579 |
3年 | 0.53 | 0.9038 |
5年 | 0.48 | 0.8569 |
10年 | 0.38 | 0.7397 |
15年 | 0.26 | 0.6225 |
20年 | 0.20 | 0.5054 |
27年 | 0.20 | 0.3596 |
30年 | 0.20 | 0.3059 |
40年 | 0.20 | 0.2089 |
45年以上 | 0.20 | 0.2000 |
不動産評価額の計算方法
実際に、相続した不動産の評価額を具体例で計算してみましょう。
一戸建ての場合
路線価が1平米10万円の土地150平米に、再調達価格が2,000万円の築15年の木造の家が建っている場合、次のように計算します。
- 土地の評価額=150平米×10万÷0.8=1,875万円
- 建物の評価額=2,000万円×0.26=520万円
マンションの場合
マンションの場合も、土地と建物をそれぞれ計算します。マンションを購入した場合には、購入金額などに応じて、土地の持ち分も一定の割合で購入しています。土地も相続対象として計算しなくてはいけません。
しかし、マンションの場合には、土地の持ち分から評価額を割り出すのは一戸建てよりも面倒くさい計算が必要です。また、建物部分の評価額も一戸建ての様に、再調達原価では計算できません。
そこで、マンションの場合には固定資産税評価額を元に計算します。固定資産税評価額が土地が700万円、マンションが1,400万円の場合には評価額は次のように計算します。
- 土地の評価額 700万円÷0.7=1,000万円
- 建物の評価額 1,400万円÷0.7=2,000万円
相続した不動産の選択肢3つ
相続した不動産をどうしたらいいのかは、その家それぞれの事情によって違うでしょう。しかし、相続放棄するのでなければ、売る、住む、貸すの3つの選択肢のいずれかを選ばなくてはいけません。それぞれのメリットや、方法について詳しく解説します。
不動産を売却する
相続した不動産を売却するメリットは、固定資産税や家の修繕費などの維持管理費がかからなくなるということと、ある程度まとまった現金が手元に入るということです。生まれ育った家を売却する場合には、実家が完全になくなってしまうというさみしさはあるでしょう。
しかし、子供がみんな遠方で独立してしまっている場合には、相続人が維持管理をするのはとても大変です。売却してしまい、現金を相続人で分けたほうがいい場合もあります。
相続した不動産を売却する場合には、まずは不動産会社に売却を依頼しましょう。良い不動産会社が見つからない場合には、良心的な不動産会社だけを集めた不動産一括査定サイトのイエウールで一括査定をしてみれば、その地域の良質で安心できる不動産会社を簡単に見つけられます。
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不動産にそのまま住む
もともと同居していたり、いずれ実家に戻ることを考えていたりした場合には、相続した不動産にそのまま住み続けるという選択肢もあります。しかし、法定相続人が複数いて、その不動産しか相続財産がない場合には、他の相続人に相続放棄をしてもらうか、家に住み続ける人が他の相続人の法定相続分の現金を支払う必要があります。
例えば、親が遺した不動産の時価が3,000万円で、子供が3人いて、長男が住み続ける場合には、他の兄弟に現金で1,000万円ずつ支払わなくてはいけません。その不動産に住み続ける人がまとまったお金を用意しなくてはいけないでしょう。
複数の相続人がいるのに、その不動産しか財産がない場合には、慎重に考える必要があります。
不動産を貸す
相続した不動産を賃貸に出してしまうという選択肢もあります。売却の様にまとまった金額は手元に入ってきませんが、毎月一定の賃料が見込めます。家の修繕管理費も賃料から賄えます。経費は掛かりますが、不動産管理会社に管理を任せれば、遠方に住んでいても管理や修繕の心配をしなくても済みます。
また、将来的に実家に戻って住みたいという場合には、一定の期限を設けて賃貸に出せば、家を空き家にして傷めることもありません。
しかし、賃貸に出すと空き家リスクがあります。賃料を見込んだ計画を立ててしまうと、空き家になってしまった場合に、支払う管理料の方が多くなってしまいます。相続した不動産が賃貸に出せる物件なのかどうかは、よくシミレーションをして、売却するのとどちらがいいのかを考えましょう。
賃貸に出す場合にも、売却する場合と同じように不動産会社に依頼するといいでしょう。不動産会社では売却だけではなく、賃貸物件も扱っています。売却したほうがいいのか、賃貸に出せる物件なのかも相談に乗ってくれるでしょう。
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相続した不動産の売却の注意点
不動産売却の際の注意点をピックアップしました。トラブルを防ぐためにも、次のポイントを把握しておくことが大切です。
契約不適合責任によるトラブル
自分の家でない場合、どんな問題を抱えているか把握しにくいです。問題があると損害賠償の請求などがあるため、事前に家の状態を確認しておくことが大切です。雨漏り、シロアリ被害、給排水管の不具合、土壌汚染、建物内で事故や事件があった、などが該当します。目に見えない部分でもあるため、見つけにくい部分もしっかりと確認しましょう。また、井戸があるか、雨漏り箇所はあるか、建物が傾いているなど、不動産会社に正直に話しておくことでトラブルを回避できます。
土地の分割相続は将来の価格変動を考慮
分割した時点では平等であっても、将来の値上がりで不満が出る可能性があります。値上がりの可能性も含めて話し合いをしておくことが大切です。兄弟など相続人が複数いる場合、相続した不動産を売却して売却代金を相続人同士で分け合う「換価分割」であれば明確に分配できるので大きなトラブルを防ぐことができます。実際に、選ばれた相続人が自分の名義にした上で売却手続きを行うこととなります。その際は遺産分割協議によって、誰が売却するのか、売却代金や期限、誰がどれだけ相続するのかをしっかり決めることが大切です。
不動産の取得費が不明だと損をする
取得費が不明だと、売却価格の5%で計算されてしまい、わずか5%しか控除できないことになります。売却金額の95%が譲渡所得となるため、課税譲渡所得額を圧縮できず損をする結果となります。取得費が不明な場合、概算取得費を用いず取得費を計算する方法が2つあります。
間接的に証明できる書類から取得費を計算する |
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統計数値を用いて取得費を推計する |
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節税しながら相続した不動産を売却
相続した不動産を損なく売却するためには、売却手順や節税方法を把握しておくことでスムーズに対応できます。自分は相続を受ける額が少ないので、他の兄弟がやってくれると人任せにするのではなく、自分も積極的に話し合いをして、トラブルなく手続きを済ませましょう。自分が不動産売却に関する情報を知っておくことで、節税できるポイントを教えてあげられることもできるため、相続人みんなに得が生じ、気持ちよく相続手続きができます。
また、 「不動産売却の際に使える特例とは?上手に活用して課税負担を軽減」 という記事や、「不動産売却にかかる期間や影響するポイントなど注意点を理解する」 という記事もご覧ください。
他にも以下の記事をご参考にしてみてください。