マンションを売却して利益が出た場合、それは所得として税金が課せられます。他にも売却時にはいろいろな税金が含まれています。ただ一方で課税だけではなく、ある一定の条件を満たせば軽減措置が適用される場合もあります。
この記事では、マンションを売却する際にかかる税金について、一通り解説しながら、実際にはどのくらい税金がいるのかをシミュレーションして、3つの例でより分かりやすく見ていただけます。売却で少しでも利益が出るようにあらかじめ税金の知識をこちらの記事でご確認ください。
マンション売却について知りたい方は、「マンション売却について知ろう!売却の流れや相場情報、注意点を解説」の記事をご覧ください。
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マンション売却でかかる税金の種類
マンションを売却すると、所得税など各種の税金がかかります。その際、「必ず支払う税金」と「利益を得た時にかかる税金」があります。また、税金を課せられたが、条件が揃う場合は軽減措置をうけることができます。
まず、マンションを売却する際にかかる5種類の税金をご紹介しますので、以下の表でご確認ください。
税金の種類 | 支払い期間 | |
必ず支払う税金 | 印紙税 登録免許税 | 売却契約をするとき ローン残債完了後、抵当権抹手続きをする |
利益を得た時にかかる税金 | 譲渡所得税 住民税 復興特別税 | 源泉徴収の時期 毎年4月~5月 確定申告の時期 |
なお、上の表でご確認いただくとお分かりいただけますが、税金の多くは利益が出たときに発生します。
マンション売却でかかる所得税とは
マンションを利益を得た時にかかる税金を譲渡所得税といいます。
譲渡所得税は、マンションを買ったときより高い価格で売れた場合は、確定申告をして所得税を納税しなければなりません。また、税率も所有していた年数によって違ってきます。それは、住民税、復興特別税も同様に税率が異なりますので下記の表でご確認ください。
譲渡所得税・住民税・復興特別税の税率
所得税 | 住民税 | 復興特別税 | 合計 | |
5年以下所有 (短期所有) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
5年超所有 (長期所有) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
また、譲渡所得税は、確定申告をする時に住民税と復興特別税と一緒に支払うことが多く、その場合、計算方法も違ってきますので、後ほどご紹介いたします。
マンション売却にかかる税金の計算方法
マンションを売却して利益が出た所得を譲渡所得といいましたが、物件を所有していた年数、短期所有と長期所有によって税率も違っていますので次にご紹介いたします。
譲渡所得税と住民税
まず最初に、売却益が出たとき、つまり譲渡所得が出たときの計算方法をみてみましょう。
- 譲渡所得(売却益) = 譲渡価格(物件の売却価格) - 取得費(物件の購入代金 + 諸費用) - 譲渡費用(売却時の諸費用)
取得費には、マンションの購入代金、仲介手数料、登記費用、各種税金のほか、リフォームやリノベーションなどの費用が含まれます。ここで注意したいのが、物件の購入代金には減価償却分(建物が古くなると価値が下落)を差引いた価格となります。譲渡費用もマンションの売却代金の他、諸費用が含まれます。
そして、譲渡所得では、特別控除の対象となる場合は差引いて課税されます。
- 課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除(居住用の3,000万円特別控除など)
次に譲渡所得では、所得税と住民税が課税されますが、合わせて納税することができます。住民税も短期所有と長期所有では税率が異なっております(前章の税率表も合わせてご確認ください)。
住民税の税率
- 購入して5年以下所有(短期所有) 税率9%
- 購入して5年超所有(長期所有) 税率5%
それでは、次に短期所有と長期所有のそれぞれの譲渡所得税と住民税の計算方法を見てみましょう。
短期所有の場合
マンションを所有して5年以内に売却した短期所有の場合の税額は
- 課税譲渡所得 × 39.63%(所得税30% + 住民税9% + 復興特別税0.63%) = 納める税金(税額)
となります。
長期所有の場合
マンションを所有して5年超の長期所有の場合は税金が安くなります。
- 課税譲渡所得 × 20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別税0.315%) = 納める税金(税額)
となります。
印紙税
収入印紙税とは、売買契約をする時に契約書などに貼付する収入印紙のことです。収入印紙を購入して契約書に貼ることで納税を済ませていることになります。契約金額によって収入印紙の値段は異なってきます。下記に印紙税の費用を表しています。
収入印紙税 | |
契約金額 | 収入印紙代 |
100万円超 ~ 500万円以下 | 2,000円 |
500万円超 ~ 1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超 ~ 5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超 ~ 1億円以下 | 60,000円 |
1億円超 ~ 5億円以下 | 100,000円 |
復興特別所得税
復興特別所得税とは、東日本大震災が2011年3月11日に起きた時に、復興支援をする目的でつくられた税金です。この税金も所得税や住民税と同じように売却利益が出て、譲渡所得が出たときに課せられます。
復興特別所得税の計算方法は譲渡所得にかかる所得税額に2.1%を加算しますが、短期所有と長期所有ともに税率は同じ2.1%です。
- 例) 所得税額320万円×2.1% = 復興特別所得税 67,200円
登録免許税
マンションを買った際に住宅ローンがまだ残っている人は、抵当権がついていることがあります。残金を返済し抵当権をなくしてから買主に引き渡すことになります。抵当権の抹消手続きには、登録免許税が必要となり収入印紙で支払うことになります。
- 不動産1件につき1,000円かかります。
マンション売却で所得税がかからないケースがある
マンションを売りに出しても所得税がかからない場合は、次の2つのケースとなります。それぞれ解説します。
- 譲渡所得がマイナスである場合
譲渡所得の計算式「譲渡収入 - (取得費 + 譲渡費)」の計算結果が0円以下であれば譲渡所得はありません。したがって、所得税はかかりません。
- 譲渡所得から控除額を差し引いた課税譲渡所得がマイナスである場合
居住用であるマンションを売却する時に「居住用財産の3,000万円特別控除」というのがあります。これは、譲渡所得がプラスのときもこの制度を利用することで、課税譲渡所得を算出するときに、譲渡所得より3,000万円を控除できるのです。計算式は次のとおりになります。
課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 3,000万円(居住用財産の特別控除)
これにより、譲渡所得が3,000万円以内であれば所得税はかからないのです。この制度はマンションの所有期間に関係なく利用することができます。
マンション売却の税金で注意すること
マンション売却におけるいろいろな税金について見てきましたが、少し注意しておくことで節税できたりしますので、解説したいと思います。
マンションの所有期間の数え方
マンション売却の譲渡所得の所有期間は、短期所有で5年以内、そして長期所有では5年超で税率が異なっておりました。
そこで、気を付けたいのが不動産の譲渡所得の所有期間は、マンションを売った年の1月1日の時点を基準としているので、注意して計算をしてください。
たとえば、平成26年4月10日にマンションを購入して平成31年4月10日に売却した場合には、平成31年1月1日の時点で所有期間が4年なので短期譲渡所得となります。所有期間が5年を迎えた日の次の年の1月1日以降に売却した場合が、5年超しとなります。この場合は令和2年1月1日以降が5年超しとなります。
マンションの短期所有と長期所有では、税率が異なり税額も2倍程度変わってしまいますので、売却時期には注意が必要です。
投資目的のマンションは消費税が課税される
投資用のマンションでは、自宅を売却する場合と税制も違いますが、特に違うのが売却代金に消費税が課税されることです。投資用の場合、課税対象となるのは建物だけで、土地は対象外です。
しかし、利益が小さいサラリーマンのアパート経営などは「免税事業者」として、支払いが免除されています。その境目は、2年前の課税売上が1,000万円を超えたか、どうかになります。この場合、売却益の有無を問わずに売却価格に対して消費税が課税されます。
投資用のマンションで譲渡所得を得た場合は、消費税の他に所得税と住民税も課税されます。購入して5年以内の売却は譲渡所得の39%、5年超は20%が課税されます。また、復興特別所得税として、2.1%が加算されます。ただ、損失となった場合は、所得税、住民税は課税されません。
購入額が不明のときは負担が重くなる
マンションを購入した時の購入額が不明の場合には、税金の負担が重くなってしまいます。
その場合、「概算取得費」を用いて算出します。概算取得費では、譲渡価格の5%で計算するため譲渡所得が大きく算出されるので税金の負担が重くなってしまうデメリットがあります。
できれば、他にマンションの購入額を証明する方法はないのか、いろいろと試してみてください。たとえば、購入から年数がたっていない場合、個人の相手方や不動産会社が契約書を残している可能性があります。あたってみると良いでしょう。あと、住宅ローンの明細や銀行の出金記録から購入価格を推測して税務署に相談する方法もあります。
売るタイミングで税金が変わる
マンションの売却をする際に、良いタイミングを逃すと有利な特例を受けられなくなる可能性があります。税金も変わるので、損をしないように対策を考えましょう。まずは不動産会社に売却査定をしてもらい確認をしておきますが、特に次の2点に注意してください。
- マンションに住んでいない場合は3年以内に売る
この「3,000万円の特別控除」は、居住用の家を売却した人に適用される特例の制度です。その内容は、利益が3,000万円までなら譲渡所得税・住民税・復興特別所得税を非課税にできます。したがって、譲渡所得税などを支払う必要がなくなる可能性が高くなるので、住まいとして売却する場合は是非、利用したい制度です。もし、住んでいない場合は3年以内に売りましょう。
- 相続税を支払ったら3年10ヵ月以内に売る
相続したマンションの相続税を支払った場合には、「取得費加算の特例」というがあり、相続税額を経費に計上できるようになっています。この特例を利用するには、相続税を支払ったら3年10ヵ月以内に売却する必要があります。
マンション売却でかかる税金のシミュレーション
マンションを売却した場合、実際にどのくらいの税金がかかるのでしょうか。下記に3例の条件でシミュレーションしましたので、見てみましょう。
5年以内にマンションを売却したケース
2,500万円でマンションを購入してから3年で、購入したそのマンションを3,000万円で売却したケースについてシミュレーションしてみます。
居住期間 3年 売却額 3,000万円 購入額 2,000万円 取得費 150万円 譲渡費用 200万円 |
まず、マンションの減価償却費を算出します。減価償却費とは、購入時の価格に対して経過年数による劣化で下落する分の費用です。居住用のマンションの減価償却費の計算方法は次の通りです。
- 物件の購入価格 × 0.9 × 0.015 × 経過年数 = 減価償却費 したがって、このケースでは
- 2,500万円 × 0.9 × 0.015 × 3 = 101万2,500円
そして、減価償却費を差し引いたマンションの購入額は、
- 2,500万円 - 101万2,500円 = 2,398万7,500円
続いて税額について計算しましょう。
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以上、短期所有で税額の合計は101万8,500円となりました。
5年超経過してからマンションを売却したケース
3,000万円でマンションを購入してから6年で、購入したそのマンションを2,500万円で売却したケースについてシミュレーションしていきます。
居住期間 6年 売却額 2,500万円 購入額 3,000万円 取得費 150万円 譲渡費用 200万円 |
減価償却費 3,000万円 × 0.9 × 0.015 × 6 = 243万円
減価償却費を差し引いたマンションの購入額は、
- 3,000万円 - 243万円 = 2,757万円
続いて税額について計算しましょう
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以上、長期所有で税額の合計は-121万2,120円となりました。マイナスなので税金の支払いはありません。
10年超所有したマンションを売却したケース
最後に、4,000万円でマンションを購入してから15年で、購入したマンションを3,500万円で売却したケースについてシミュレーションしてみます。
居住期間 15年 購入額 4,000万円 売却額 3,500万円 取得費 150万円 譲渡費用 250万円 |
減価償却費 4,000万円 × 0.9 × 0.015 × 15 = 810万円
減価償却費を差し引いたマンションの購入額は、
- 4,000万円 - 810万円 = 3,190万円
続いて税額について計算しましょう
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以上、長期所有で税額の合計は2,717円の支払いとなります。
マンション売却で使える税金の特例
それでは、マンション売却において税金の控除をするためのメインとなる特例をこちらの記事でご紹介しましょう。こちらの特例を受けることでかなりの節税となりますのでよくご確認ください。
3,000万円の特別控除の特例
まず最初に、多くの人が対象となる居住用財産を譲渡した場合に利用できる「3,000万円の特別控除の特例」です。これは、マイホームとしてのマンションで住んでいれば、譲渡所得から3,000万円の控除ができます。
そして、この控除制度には短期譲渡所得や長期譲渡所得のように居住年数は関係がありませんので控除としては非常に大きな特例です。それでは、次にこの特例の利用方法をご紹介します。
- 「3,000万円の特別控除の特例」の利用方法
マンションを売却した翌年に確定申告をします(2月16日~3月15日)。その時、確定申告書と一緒に「譲渡所得の内訳書」を添付して提出してください。譲渡所得の内訳書の作成はなかなか大変なため、できれば税理士に依頼すると良いでしょう。
以上、利用方法をご紹介しましたが、この「3,000万円の特別控除の特例」が利用できない場合もありますのでご紹介します。下記をご確認ください。
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以上のケースの場合は利用できないのでご注意ください。あと、この特例は「一人につき最大3,000万円の控除の特例」なので夫婦で共有して持っている場合は倍の6,000万円まで最大控除することができます。
10年超所有の軽減税率
マイホームを10年以上所有していて、その後に売却をすると軽減税率の対象となり適用されます。次にその要件をご紹介します。
- 10年超所有軽減税率の要件
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以上が適用できる要件でした。次にこの特例を受けた場合の課税額は以下の通りです。
譲渡所得のうち6,000万円以下の部分: 譲渡所得 × 14% (所得税10% + 住民税4%)
譲渡所得のうち6,000万円を超える部分 : 譲渡所得 × 20%(所得税15% + 住民税5%)
譲渡所得が6,000万円を超えることはあまりありませんので、6,000万円以下の14%を基本的に覚えておくと良いでしょう。
特定の住居買い換えの特例
マイホームを売却し買い換えた時に、新しく買った住居が高い場合、次に売却するまで課税を繰り越すことができます。特定の住居買い替えの特例を利用する場合は、以下の要件に適さなければなりません。
- 住居買い替えの特例の要件
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なお、この特定の住居買い替えの特例は、3,000万円特別控除の特例を利用することで、場合によっては税額が0円となるため、あまり利用されません。3,000万円特別控除の特例は繰り越しにはなりませんが、大きな節税ができるため優先して利用されることをおすすめします。
マンションを売るときは専門家に相談しながら売ろう
マンションをより高く売り、できるだけ節税もしたいなど税金のことも含めて専門家に相談することをおすすめします。特にマンション売却にかかる税金の計算の算出などは、なかなか素人では難しいと思います。税金に詳しいプロに相談することで、より早く正確に納税額なども知ることができます。
そこで、自宅にいても外出中でもパソコンやスマホで簡単にアクセスできる、不動産一括査定サイトのイエウールが便利です。全国より厳しく選ばれた1600社以上の不動産会社が対応してくれます。きっと、信頼できる不動産会社に出会えて、良き税理士さんにご相談いただけると思います。
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所得税がかからないケースのほうが多い
今回の記事では、計算式やシミュレーションなどを入れて税金を計算しました。その部分だけでも練習のつもりでご自身の計算を行ってみてください。きっと、理解が進むと思います。
そして、算出して出た結果、税金がほとんど必要ない人、またはマイナスの人もおられるかもしれません。実際、税金がかからないケースの方が多く存在します。例えば、次のような時には税金がかかりません。
- マンションを買ったときより安く売った場合
- マンションを売却した時の譲渡所得が3,000万円以下の場合
これら2つがポイントです。当てはまる場合は税金がかからないケースとなります。特にマンションを買った時よりも安く売ったかどうかで、判断されると良いでしょう。安く売った場合は、譲渡益がありませんので課税対象の収入がなかったということになります。
いかがでしたでしょうか。マンション売却にかかる所得税はいくらかかるのかを解説いたしましたが、税金の基本的なポイントだけ押さえていただければ、理解しやすいと思います。必要な時に良かったらまた、ご確認していただければ幸いです。
もっと詳しく知りたい方は、 「マンション売却にかかる諸費用とは?節約してお金を手元に残そう」 の記事をご覧ください。
また、「マンション売却を失敗しないコツ!注意すべきポイントと失敗例」 という記事もご覧ください。
他にも以下の記事をご参考にしてみてください。