不動産を売却すると、健康保険料が上がってしまったという話があります。せっかく利益が出たのに、保険料や税金が上がってしまったのでは意味がないと思う人もいるでしょう。結論から言うと、あなたが自営業の人や退職した人なら不動産を売却すると国民健康保険料が高くなることがあります。
しかし、特別控除を利用することによって保険料の値上がりや税金をゼロにすることも可能です。損しないためにも、どのような条件で保険料が上がるのか、不動産所得の税金はどのように計算するのかを理解しておくことが大切です。
ここでは、国民健康保険の仕組みから、値上がりするパターン、使える特別控除の条件などを詳しく解説します。
不動産売却について知りたい方は、 「不動産売却にかかる期間と売却に影響するポイント」 の記事をご覧ください。
あなたの不動産の
売却価格を
いますぐチェック
不動産をどうするか迷っている方は、まず査定をして価格を知りましょう。査定するなら一括査定サイトのイエウールがおすすめ。完全無料で複数の会社に査定をしてもらうことができます。
国民健康保険料は不動産を売却すると上がる?
不動産を売却する際に知っておきたいのは、売却によって国民健康保険料が上がるのかどうかという点です。健康保険には様々な種類があり、社会保険に含まれる健康保険や共済組合保険、国民健康保険などがあります。
それぞれで不動産売却によって受ける影響が異なるため、違いを把握して売却と保険料の関係性を把握していきましょう。
健康保険の場合
社会保険に含まれる健康保険は、会社員などの一般的なサラリーマンやその配偶者や子供など、扶養されている人が加入する保険です。健康保険の場合は不動産を売却しても保険料は上がりません。これは、健康保険の保険料は、会社から出る給料がいくらかを基準にしているからです。
不動産売却で利益が出た場合でも、税制上の給与所得は上がっていないため、保険料は影響を受けないと考えましょう。ただし、扶養に入っている人が不動産売却を行うと、所得が増えることで扶養から外れ、保険料が増加する場合はあるため、この点には注意が必要です。
共済組合保険の場合
共済組合保険は公務員が加入している保険であり、これも不動産売却によって保険料が上がることはありません。共済組合保険での保険料は、給料が基準となっているため、不動産売却による利益が出ても、公務員としての給料が上がっているとはみなされません。そのため、保険料は増加しないと考えましょう。
国民健康保険の場合
自営業者などが加入している国民健康保険は、不動産の売却によって保険料が上がる可能性があるため注意が必要です。国民健康保険は所得の総額によって保険料が決まるため、不動産売却によって利益が出ると、所得が増加したとみなされ、保険料が高くなってしまいます。
もちろん、不動産を売却したからといって、確実に保険料が高くなるとは限りません。売却しても利益が出なかったり、自営業分の収入が減っていて所得の総額が低くなったりする場合は、保険料はそのままか、場合によって減額されることもあります。
不動産売却を検討している方は、まず査定を検討するとよいでしょう。査定を依頼するには複数の不動産会社に無料で依頼できる一括査定サービス「イエウール」がおすすめです。
60秒ほどの入力でかんたんに査定依頼は完了します。以下のバナーを押して、査定依頼に進みましょう。
↑完全無料で査定依頼できます↑
国民健康保険料の計算方法
実際に国民健康保険料がいくらになるのかを知るためにも、詳細な計算方法を知っておきましょう。保険料を計算するには、詳細な内訳を知り、健康保険がどのように構成されているのかを把握しておくことが大切です。
国民健康保険料の内訳
国民健康保険は各自治体ごとに運営されているため、同じ所得であっても保険料は一律ではありません。しかし、税率が違うだけで保険料を算出する方法や仕組みは同じです。 健康保険料は、以下の3つの合算で計算します。
- 医療分
- 後期高齢者支援分
- 介護保険分
この3つの保険料は、それぞれ「所得割」「均等割」「資産割」「平等割」の4つの要素で構成されています。
医療分の4つの要素 | 保険料の算出方法 |
所得割 | 所得金額によって算出 |
均等割 | 世帯当たりの加入人数によって算出 |
資産割 | 固定資産税の額によって算出 |
平等割 | 自治体ごとに決められた金額 |
保険料の算出方法は人によって違うため、気になる方は上記の4つの要素から再度算出してみてください。
不動産売却で利益が出た場合のシミュレーション
ここでは例として、東京都世田谷区の国民健康保険料の税率を用いて保険料を算出していきます。
– | 医療分保険料 | 後期高齢者支援分保険料 | 介護保険料 |
所得割額 | 世帯の加入者全員の算定基準額×7.14% | 世帯の加入者全員の算定基準額×2.29% | 世帯の加入者のうち40~64歳の算定基準額×2.05% |
保険料上限 | 63万円 | 19万円 | 17万円 |
総所得金額等が600万円だったと仮定して、600万円から33万円を引いた567万円が所得割算定基礎額となります。
所得割算定基礎額=総所得金額等-33万円
この所得割算定基礎額567万円に先ほどの3つの税率をかけていきます。
- 医療分:567万円×7.14%=404,838円
- 支援分:567万円×2.29%=164,430円
- 介護保険分:567万円×2.05%=116,235円
40~64歳以外の人は、医療分と支援分のみなので、
404,838円(医療分)+164,430円(支援分)=569,268円
40~64歳の人は、これに介護保険分を加えた、
404,838円(医療分)+164,430円(支援分)+116,235円(介護保険分)=685,503円
上記の額が所得割額となります。 不動産売却によってどれくらい保険料が増えるかを計算するためには、譲渡益を総所得金額等に足して所得割算定基礎額を算出し、住んでいる自治体が制定する税率をかけ合わせれば求められます。
不動産売却をして国民健康保険料が上がらない場合とは
不動産売却をしても、ケースによっては国民健康保険料が上がらないこともあります。不動産を売却したからといって、必ずしも保険料が増額されるわけではありません。どのようなケースだと保険料が増加しないのかを知って、国民健康保険への理解をさらに深めましょう。
保険料が上がらないケース
不動産売却をしても保険料が上がらないケースとしては、次の3つがあげられます。
- 社会保険の健康保険に加入している場合
- 共済組合保険に加入している場合
- 売却によって譲渡益が出ない場合
健康保険や共済組合保険は、給料をベースに保険料を決定しているため、不動産売却をして所得が増えたとしても、給料自体は増えていないため保険料は上がりません。
また、自営業者などが加入する国民健康保険は所得をベースに保険料を計算するため、不動産を売却すると保険料が上がる可能性が高いです。しかし、国民健康保険でも、不動産売却によって利益、つまり譲渡益が出ない場合は、保険料が増額されることはありません。
譲渡益が出ないということは、所得が増えていないということになるため、売却して手元にお金が残る場合でも、保険料が上がらないケースはあるでしょう。譲渡益が出ているかどうかは、次の式で計算します。
譲渡益=売却価格-(取得費+譲渡費用)
売却価格 | 不動産を売却することによって買い手から受け取った金額 |
取得費 | 土地や建物の購入代金から減価償却費を引いたもの |
譲渡費用 | 不動産を売却するためにかかった経費 |
例えば売却価格が3,000万円で、取得費が2,800万円、譲渡費用が200万円の場合は譲渡益が出ていないことになるため、売却しても保険料は上がりません。さらに不動産売却では特別控除などが適用でき、これを使うことでも譲渡益は縮小できます。
控除の制度を使うことで譲渡益が出ない可能性は高くなるため、不動産売却をしても保険料が上がるリスクはそれほどないといえるでしょう。
3,000万円特別控除とは
3,000万円特別控除とは、適用することで売却価格から3,000万円を差し引いて譲渡益を計算できます。つまり、3,000万円特別控除を適用した場合の計算式は、次の通りです。
譲渡益=売却価格-(取得費+譲渡費用)-3,000万円(特別控除)
つまり、売却価格が3,000万円以下なら、その時点で譲渡益は発生しないことになり、保険料の増額もないでしょう。特別控除を利用することでお得に不動産売却ができますが、適用するには条件があるため注意しなければなりません。
- 自分が住んでいる家屋を売ること
- 以前住んでいた家屋は、住まなくなった日から3年経過する日の属する12月31日までに売ること
- 売った年とその前年、前々年にこの特例やマイホーム買い替えなどの特例を受けていないこと
- 売り手と買い手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと
3,000万円の特別控除は3年に1度しか利用できず、住まなくなってから3年以内に売らなければなりません。条件が当てはまる人は、確定申告をすることで特別控除を受けられます。不動産を売却した年の確定申告は、譲渡所得の内訳書を用意しておき、忘れずに申告しましょう。
不動産売却では国民健康保険料の値上がりに注意
不動産を売却して利益が出た場合は、国民健康保険が値上がりするだけではなく、譲渡所得税もかかってきます。ただし、特別控除をうまく使えば譲渡所得税をゼロにし、国民健康保険料が値上がりしない状態にすることができます。
特別控除を利用するためにも確定申告を行うことが重要です。 特別控除が受けられず保険料が値上がりするケースもあるので、不動産を売却する予定のある方は事前に売却相場価格を把握しておき、売却益が出るのかどうかを確認しましょう。
もっと詳しく知りたい方は、 「不動産売却で扶養から外れる|工夫して扶養のままでいる方法や注意点」 の記事をご覧ください。
また、「不動産売却の際は弁護士に依頼すべき?必要なケースや費用を解説」 という記事や、 「不動産売却時の委任状はどう作成するか|その方法や注意点を解説」 という記事もご覧ください。 他にも以下の記事をご参考にしてみてください。