不動産売却の際、様々な出費が重なる中、少しでもコストを抑えお得に済ませたいのが本音でしょう。売却にかかる費用のうち、特に大きな割合を占めるのが不動産会社に支払う手数料です。 不動産会社の中には手数料無料で仲介してくれるケースも見かけますが、果たして本当にお得なのでしょうか。
この記事では不動産売却にかかる手数料が無料になる仕組み、そしてそのメリットデメリットについて詳しく紹介していきます。
不動産売却で手数料が無料の会社を3社紹介
まずは不動産売却の仲介をしてもらい、手数料が無料になる不動産会社を知っていきましょう。
- 株式会社アローズリアルエステート
- 株式会社不動産流通システム
- 株式会社トライホーム
これら3社は仲介手数料が無料であるため、よりコストを抑えて不動産売却を行えます。
株式会社アローズリアルエステート
株式会社アローズリアルエステートの基本情報は、次の通りです。
基本情報 | 詳細 |
社名 | 株式会社アローズリアルエステート |
所在地 | 東京都中央区日本橋2-8-6 太陽生命ひまわり日本橋ビル7階 |
創立年 | 2009年6月1日 |
不動産売却における仲介手数料を無料にする、「売却仲介手数料ゼロフリーシステム」を採用している企業であり、手数料無料ビジネスのパイオニアといえます。
利用者からの評価もよく、契約実績が多い点も魅力でしょう。仲介手数料無料での売却活動だけではなく、投資用不動産の売買や賃貸、不動産買取やリフォーム・リノベーションなど、幅広い事業を展開しています。不動産事業全般に取り組んでいる企業であり、様々なノウハウが蓄積された力のある企業といえるでしょう。
株式会社不動産流通システム
株式会社不動産流通システムの基本情報は、次の通りです。
基本情報 | 詳細 |
社名 | 株式会社不動産流通システム |
所在地 | 東京都千代田区神田松永町10番地 長谷川ビル702号室 |
創立年 | 2008年10月28日 |
仲介手数料無料で不動産売却ができることはもちろん、専門知識や資格を持った担当者が多く在籍していることが大きな特徴です。
株式会社不動産流通システムでは、営業担当者全員に宅地建物取引士を必須条件として取得させています。また、さらにワンランク上の宅建マイスターの認定を受けるように求めており、担当者の知識や実力は高いといえるでしょう。
有資格者が多いため、信頼度が高く、より専門的な視点から売却のサポートをしてもらえるため、仲介手数料無料でも安心して利用できます。
株式会社トライホーム
株式会社トライホームの基本情報は、次の通りです。
基本情報 | 詳細 |
社名 | 株式会社トライホーム |
所在地 | 東京都羽村市富士見平2丁目18番地3 |
創立年 | – |
株式会社トライホームでは、仲介手数料が最大無料となります。これは売却時の状況によって異なるからであり、例えば買主が業者である場合は業者から手数料を全額請求できるため売主は無料です。
しかし、買主が業者以外になると、買主と売主で仲介手数料を折半することになるため、半額の負担が必要です。つまり、株式会社トライホームでは仲介手数料は最大無料で、最低でも半額ということになり、他の不動産会社よりお得であることは間違いないでしょう。
手数料が無料の理由
仲介手数料が無料になる理由としては、次の2つがあげられます。
- 不動産会社は別の所でも稼げるから
- 法律上決まっているのは上限だから
本来費用がかかるはずの手数料がなぜ無料になるのか、これらの理由から知っていきましょう。
不動産会社は別の所でも稼げるから
不動産取引では、売り手と買い手それぞれに不動産会社がいる場合と、ひとつの会社が売り手と買い手両方の仲介を行う場合があります。前者の場合は「片手仲介」、後者の場合は「両手仲介」と呼ばれており、両手仲介の場合は別の所で不動産会社は稼ぐことができます。
両手仲介では不動産会社は売り手と買い手の双方から手数料をもらえるため、単純に利益は2倍です。つまり、売却の手数料が無料となるのは、不動産会社が買い主からのみ手数料をもらい、売り主からはもらわないというケースです。
例えば手数料が100万円かかる取引で、不動産会社が売り手と買い手の両方から手数料を受け取れる状態にあるとします。この場合、両者に全額請求すると、不動産会社の利益は合計200万円となりますが、片手仲介のケースを考えるなら、半額の100万円でも十分に利益が出ます。
そのため、売り手を優遇し、確実に自社で売却してもらうために買い手にのみ100万円を請求し、売り手の手数料を無料とすることでも、ビジネスとしては成立するでしょう。
法律上決まっているのは上限だから
仲介手数料は法律で「不動産の売買金額×3%+6万円+消費税」と上限が定められています。ここで注目したいのが、定められているのは上限のみであるという点です。法律上の制限が上限のみであるため、不動産会社はその範囲内でなら自由に手数料を設定できます。
つまり、上限額いっぱいまで請求しても問題はなく、反対に下限の範囲内で大幅に割引したり、無料にしたりすることも可能です。
上限のみの取り決めであるため、仲介手数料は交渉次第で減額できるケースもあります。手数料無料をうたっていない不動産会社でも、交渉次第で割引をしてもらえることはあるため、一度挑戦してみてもよいでしょう。
不動産の売却においては、売却時にかかる税金や登記の費用、その他引越しや引き渡しをするまでの細かい手続きなどにかかるコストは、ある程度固定されています。
売却時にかかる費用のうち、もっとも変動が大きいのが仲介手数料であるため、これをいかに下げるかによって、売却にかかるコストを大幅に削減できるでしょう。
不動産売却で手数料が無料のリスク
売却価格次第では高額になる仲介手数料が無料になるのは大きな魅力ですが、一方で無料になるからこそのリスクも潜んでいます。
- 売却価格が下がる可能性がある
- 他の名目で手数料が取られる可能性がある
- 売却活動がはかどらない可能性がある
これら3つのリスクを把握し、仲介手数料無料にいかなる危険性があるのかを知っていきましょう。
売却価格が下がる可能性がある
手数料が無料になる場合、一つの不動産会社で売り手と買い手の両方を仲介している「両手仲介」となります。具体例で見ていきましょう。例えば、会社Xが仲介を担当している物件に対し、二人の買い主AとBが同じタイミングで購入を申し込んだとします。
買い主Aは4,500万円、買い主Bは5,000万円で購入を申し込みました。ただし、買い主Aの仲介は不動産会社Xが担当しているため、Aと取引した場合には、「両手仲介」となります。
この場合、売り主の立場からすると、当然5,000万円で売ることのできる買い主Bと取引したいと思うはずです。しかし、Bと取引した場合、Bの不動産会社はXとは別の会社であるため両手仲介にはなりません。よって、手数料が無料になることは考えにくいです。
一方、Aと取引した場合、両手仲介となり手数料は無料になるかもしれませんが、Bと取引した場合より500万円安い価格で売ることになります。つまり、手数料無料にこだわると、より安い価格で物件を売ることになる可能性があり、手数料の分費用が浮いたとしても結果的には損をする可能性があるのです。
これは囲い込みとも呼ばれるものであり、不動産会社が確実に利益を得られるまで売却活動を制限したり、両手仲介になる場合でのみ買い手に声をかけたりするといったリスクが隠れています。
他の名目で手数料が取られる可能性がある
不動産会社は仲介手数料を請求代わりに、他の名目で費用を多く計上して、結果的に多額の手数料を請求される可能性もあります。
手数料の名目は不動産会社によって異なりますが、広告費やコンサル費用などと称して、実際には不要なコストを請求されることもあるでしょう。また、物件の広告費は法律による上限の定めがないため、相場よりも高値で請求されることもあります。
仲介手数料は不動産会社の収入源といえ、自社の利益を確保するための重要なものです。これを削減するということは、別の部分で収入を上げないと儲からない場合が多いため、手数料無料が必ずしもお得とは限らないことは理解しておきましょう。
売却活動がはかどらない可能性がある
仲介手数料が無料になることで不動産会社の報酬が減り、売却活動に力を入れてもらえない可能性があります。広告などにコストをかけたとしても、最終的に自社で契約できなければ全て無駄になってしまいます。
そのため、仲介してくれる不動産会社が積極的に売却活動をしてくれないことも多いです。とりわけ、チラシの作成、ウェブサイトへの掲載など、広告費がかかる売却活動は敬遠されやすく、長い間買い手が見つからない状況が続くこともあります。
また、両手仲介になるように買い手を厳選してしまい、その結果売却期間が長くなってしまうこともあるでしょう。
手数料を無料にした場合のシミュレーション
実際に仲介手数料が無料の場合には、どれくらいお得なのかシミュレーションをしてみましょう。売却価格や売却にかかった費用によって利益は変動しますが、ある程度のイメージを掴んでおくことは大切です。仲介手数料が無料な場合と、そうでない場合で比較して、どちらがお得なのかを把握しておきましょう。
シミュレーションをした結果
例えば3,000万円で不動産を売却した場合は、消費税率10%で計算するなら仲介手数料の上限は105万6,000円です。上限いっぱいまで請求された場合と比較すると、仲介手数料無料ならば約100万円がお得ということになります。
仲介手数料の上限額は売却価格が高くなるほど高額になり、例えば4,000万円なら138万6,000円、5,000万円なら171万6,000円となり、手数料無料ならそれぞれこの金額分がお得になります。
手数料無料よりも高く売った方がお得
仲介手数料が無料になると、数十万円から場合によっては100万円以上コストが削減できる場合があります。しかし、手数料が無料であることで不動産会社の売却活動がはかどらず、結果的に売却価格が下がって損をするケースもあります。
例えば3,000万円で売却した際の仲介手数料の上限額は105万6,000円です。手数料無料で不動産会社が売却活動に精を出してくれない、あるいは囲い込みなどで売却条件が下がって2,700万円で売れたとします。
この場合だと仲介手数料を上限いっぱい支払う場合でも約2,895万円で売却できたことになり、手数料無料のケースよりも売却価格は高いです。
また、不動産を売却した翌年には、次の式で計算してプラスが出ているなら確定申告をして税金を納めなければなりません。
- 譲渡所得=売却価格-不動産の取得費-売却にかかった費用-特別控除など
売却にかかった費用が高いと手元に残るお金は少なくなりますが、課税対象額は引き下げられます。売却時の仲介手数料は売却にかかった費用として経費にできるため、たとえ多くかかったとしても税制上はお得といえるでしょう。
つまり、手数料無料の場合は経費も減ってしまうため、譲渡所得が多く発生してしまう可能性もあり、売却時にはお得でも、確定申告をして税金を支払うと結果的に損になってしまうこともあります。
ケースによってどちらがお得かは異なりますが、仲介手数料が上限いっぱいかかったとしても、より高値で売れたほうがお得である場合は多いでしょう。
手数料無料がよい場合ばかりではない
不動産売却の際にかかる費用のうち大きな割合を占めるのが、仲介してくれる不動産会社に支払う仲介手数料です。中には無料で仲介を行ってくれる会社もあり、大幅なコスト削減につながるため、一見お得に感じます。
しかし一方では、売却価格が下がる、他の名目で手数料が取られる、売却活動がはかどらない、などのデメリットが発生し、結果的に損をしてしまう可能性があります。
よって、手数料無料だけを見て会社選びをするのはできる限り避け、手数料がかかったとしても、サービス面などバランスよく全体を見て、自分の条件に合った不動産会社を選ぶことが大切と言えるでしょう。
もっと詳しく知りたい方は、「不動産売却の仲介手数料はいくら?相場や値引き、注意点を解説」の記事をご覧ください。
また、 「不動産売却にかかる登記費用とは?費用の内訳やいくらかかるか解説!」 という記事や、「不動産売却時に使える取得費とは|なにが該当するか各ケースを解説」という記事もご覧ください。
他にも以下の記事をご参考にしてみてください。