転勤などで引っ越ししなければならなくなったときに、今まで住んでいたマンションはどうすればよいのか迷う方も多いでしょう。多くの場合は、そのマンションを売却するか誰かに貸すか、その2つを考えます。
いずれ戻るのであれば、費用や手続きなどのことも考えると賃貸に出すほうが有利です。賃貸にすることで、入居者がいる限りは賃貸料が入ってきますし、空き室の状態による劣化も防ぐことができます。
しかし、料金をとって貸すからには税金もかかってきます。この記事では、マンションを賃貸した際にかかる税金の計算方法や、確定申告のときの節税方法などについて詳しく解説するので、参考にしてみてください。
マンションを貸すこと全般について知りたい方は、「マンションを貸すと儲かる?貸す場合のメリット・デメリットや流れを解説」 の記事をご覧ください。
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マンションを貸すときにかかる税金とは
マンションを貸すときの税金は、所得税と住民税と固定資産税と都市計画税の4つです。例えば、マンションを貸して賃料収入と給料収入が合わせて600万円ある場合、所得税と住民税は30%かかるので180万円です。また固定資産税と都市計画税を40万円とすると、マンションを貸すときの税金は合計で220万円になります。
所得税について
所得税には総合課税と分離課税があります。総合課税とは、給与所得や営業所得、利子所得など他の種類の所得と合算して合計金額に対して課税される方式です。一方で分離課税とは、他の所得の有無や金額の大小にかかわらず、その所得に対してだけ税率が適用されるものです。
マンションを貸した所得は総合課税されます。給与所得や営業所得などと合算した合計金額に対して、所得金額に応じた税率で課税されます。もしも賃貸ではなく売却した場合には分離課税で計算します。日本の所得税は累進課税なので、所得金額が大きくなればなるほど税率も上がります。
所得税の税率は次の表のとおりです。
課税対処となる所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
住民税
住民税とは市区町村住民税と都道府県民税を合わせたものです。住民税は所得の多さに関わらず所得に対して10%が課税されます。それぞれの税率は次の通りです。
住民税の種類 | 税率 |
---|---|
市区町村住民税 | 6% |
都道府県民税 | 4% |
合計税率 | 10% |
復興特別所得税
復興特別所得税とは、2011年に発生した東日本大震災からの復興に充てるために定められた税金です。2037年まで全ての納税者に対して課税されます。復興特別所得税の税額は、所得税額の2.1%が課税されます。注意点は、所得に対する2.1%ではなく、所得税額に対しての2.1%です。
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マンションを貸すと税金は増えるのか
マンションを貸すと支払わなくてはいけない税金が増えるのか、それとも節税対策になるのか、気になっている方もいることでしょう。
結論から言うと、所得が多くなればなるほど支払うべき税金の金額は増えます。マンションを貸したことで、利益が多くなればなるほど課税額は増えます。しかし、マンションを貸した場合の不動産所得とは、貸したことで入ってきた賃料全額になるわけではありません。
マンションを所有する上でかかるマンションの管理料や修繕積立費、入居者を募集するためにかかった費用、退去した後のクリーニング費用などは、経費として差し引くことができます。また、入居者を募集したのに借り手がなくて賃貸料が1円もなくても確定申告をすれば課税額を計算するときに経費として認められます。
もしも、1年間募集をかけていても入居者がなく、管理費などの出費ばかりが続いたとします。この場合には完全に赤字ですが、マンションを維持管理するのに必要な経費は確定申告すると認められます。前の章で見たように、マンションを賃貸に出した所得は総合課税されるので、給与所得や事業所得と合算できます。
不動産所得の赤字は給与所得などの他の所得と相殺できます。相殺することで、節税できる可能性もあります。マンションを貸すために維持管理するのには何かと経費が掛かります。経費が掛かれば、納税額はその分だけ抑えられます。
マンションを貸した時の税金シミュレーション
マンションを貸したら、実際にどのくらいの税金を収めなくてはいけないのか、税額を算出するための計算方法をお伝えした上で、いくつかの事例で計算してみましょう。
税金の計算方法
納税額を算出するための計算方法は以下の通りです。
不動産所得の算出方法
まずは賃貸収入から経費を差し引いた不動産所得を計算します。経費として認められるものは次のものです。
- マンションやマンション経営に関する税金(固定資産税・都市計画税・事業税・消費税・収入印紙代)
- 修繕費・ハウスクリーニング費用
- 損害保険料(該当年の掛け捨て部分のみ)
- 管理費
- 入居者募集のための宣伝費
- 税理士・弁護士への報酬
- 減価償却費
- 立ち退き料
- 共用部分の水道光熱費
- ローンの金利(賃貸開始後の支払った部分のみ)
- その他雑費(掃除や消耗品などにかかった経費)
そのマンションに関わるお金でも経費とをして認められないものは次のものです。
- ローンの元本部分の返済
- 自宅として使っていた時の経費
- 住民税と所得税
不動産所得の計算方法は次の計算式です。
1年間の賃貸料の合計額-各種経費=不動産所得
マンションの減価償却法
マンションの不動産所得税を算出するためには、先にマンションの減価償却額を算出する必要があります。減価償却とは、古くなることで価値が減少していくことです。不動産では工法によって一定の数字を購入金額に掛けることで算出します。マンションを含めた不動産の減価償却費は、次のような式で計算されます。
減価償却費=マンション購入金額×0.9×定額法の償却率×年数
なお、上記は2007年3月31日以前に購入した場合の式で、それ以降は次の式で計算します。
減価償却費=マンション購入金額×定額法の償却率×年数
ここで用いられる定額法の償却率は、次の表をもとにします。
耐用年数 | 定額法償却率 |
---|---|
2年 | 0.500 |
10年 | 0.100 |
15年 | 0.067 |
30年 | 0.034 |
50年 | 0.020 |
なお、建造物には構造別に耐用年数があり、年数を過ぎると償却率は0になります。ここでは、住居用の耐用年数を表にします。
構造 | 耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
木骨モルタル | 20年 |
鉄筋コンクリート | 47年 |
れんが、石、ブロック | 38年 |
参考:国税庁HP
所得税の計算
賃貸料による不動産所得税は、次のように算出されます。
不動産所得×所得税率=所得税額
住民税
賃貸料による住民税は、次のように算出されます。
不動産所得×住民税率=住民税額
復興特別所得税の計算
復興特別所得税は、次の式で算出されます。
所得税額×2.1%=復興特別所得税額
計算事例
具体的な数字で、どのくらいの納税額になるのかを計算してみましょう。
サラリーマンとして年収800万円で、月額20万円のマンションを賃貸に出しています。1回入居者が入れ替わったので、敷金礼金が2か月分入ってきました。年間にかかった必要経費は190万円です。97万円給与所得から源泉徴収されています。所得控除は100万円です。
不動産所得の合計額
20万円×12か月=240万円
20万円×2か月分=40万円
合計金額=240万円+40万円=280万円
不動産所得の金額
280万円-190万円=90万円
総合課税なので給与所得と合算します。
90万円+800万円-100万円=790万円
所得税額
790万円×23%-63万6,000円=118万1,000円
住民税額
790万円×10%=79万円
復興特別所得税
118万1,000円×2.1%=2万4,801円
納税額
所得税額+住民税額+復興特別税-源泉徴収=118万1,000円+79万円+2万4,801円-97万円=98万1,044円
この事例の場合の、不動産所得と給与所得を合わせて、確定申告で自分で納税する分は98万1,044円です。
確定申告による節税方法
確定申告は収入がなくても行うことで、節税対策にもなります。確定申告を賢く利用して節税しましょう。
マンション賃貸でかかる経費を計上できる
賃貸による収入が多いと、それだけ所得税額も高くなります。しかし、マンションにかかる費用はすべて経費として計上できるので、経費が多いほど税額も下がります。マンションを賃貸にすることでかかる費用は、すべて経費として計上されますが、賃貸として入居者が入る前の準備段階にかかった費用も含まれています。
具体的には、賃貸にするためのメンテナンスや設備投資、設備の交換費用、壁や床、内装、玄関回りなどのリフォーム代、室内外のクリーニング代、入居者募集にかかった宣伝広告費、アパートローンの返済額、契約した不動産会社への委託管理費や手数料などが経費になります。
他の所得と合わせることができる
マンションを賃貸して得られる賃貸料だけでなく、給与所得や営業所得、年金所得なども所得額として一つにまとめて計算します。この場合に、不動産以外に適用される控除は次のようなものが適用されます。
- 基礎控除(一律38万円)
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寡婦、寡夫控除
- 特別控除
- 医療費控除
- 扶養家族控除など
基礎控除は一律38万円ですが、他の控除額は所得により違います。また、条件によっては適用されないものもあります。
青色申告の特別控除
青色申告の個人事業者は、最大65万円あるいは10万円の特別控除が受けられます。青色申告は、開業届や青色申告承認申請書を提出することで適用されます。特別控除のうち65万円の控除が受けられるのは、次のような条件が必要です。
- 事業所得あるいは不動産所得がある
- 複式簿記で記帳する
- 確定申告の期日を守る
上記の条件に満たない人は、特別控除額は10万円になります。どちらの申告も確定申告書、複式簿記帳と貸借対照表、損益計算書を期日までに提出しなければ適用されません。
また、青色申告の申請を希望する人は、原則として開業届や青色申告承認申請書を開業した日から2カ月以内に提出することになっています。ただし、提出しなくても青色申告に必要な書類をそろえて提出することで、青色申告扱いになります。
マンションを貸すときの税金を考えて賃貸に出そう
たとえ自分で購入したマンションでも、賃貸に出すためにはいろいろな手続きや費用が必要になり、すぐに賃貸に出すわけにはいきません。また、賃貸にした以上は賃貸料が入ってくるので、その管理もオーナーの大切な仕事になります。
そして、何といっても賃貸に出す前に必要なのは賃貸料を設定することです。賃貸料額はオーナーが決めますが、地価や周辺の相場だけではなく、支払うべき税金や諸費用など十分なリサーチが必要です。リサーチにはじっくり時間をかけてから賃貸料を設定しましょう。
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もっと詳しく知りたい方は、「マンションを購入して貸すと得する?貸すリスクや利回りを知ろう」という記事をご覧ください。
他にも以下の記事をご参考にしてみてください。
- 「マンションを貸すときのローンをわかりやすく解説」
- 「マンションを貸す方法とは?必要になる諸費用についても知ろう」
- 「マンションを貸すときの費用は?初期費用だけでなく維持費も知ろう」
- 「マンションを個人的に貸すためのガイド|基礎知識を詳しく解説」
マンションを貸すときにかかる税金は?
マンションを貸す際、支払う税金は所得税と住民税と固定資産税と都市計画税の4つです。特に所得税と住民税は、課税対象となる所得や住んでいる場所によって税率が変わるので注意が必要です。それぞれの税率について詳しく知りたい方は、マンションを貸すときにかかる税金とはをご覧ください。
入居者が集まらなくても、支払う税金は増えるのか?
入居者が集まらない場合、支払う税金は増えません。むしろ節税することも可能です。なぜなら入居者を集める広告費、管理費といった経費を他の所得と相殺することができることができるからです。マンション売却にかかる費用について詳しく知りたい方は、マンションを貸すと税金は増えるのかをご覧ください。
マンションを貸す際の税金を算出する方法は?
税金を求めるには、「不動産所得額×税率」で求めることができます。不動産所得額は、「1年間の賃貸料の合計額-各種経費=不動産所得」によって求めることができます。しかしマンションの減価償却額を算出する必要があるため、減価償却法についても知っておく必要があります。マンションの減価償却法について知りたい方はマンションを貸した時の税金シミュレーションをご覧ください。
マンション貸す際にかかる税金を節税する方法は?
確定申告によって、節税することができます。例えば給与所得や営業所得、年金所得などと合わせることで基礎控除や社会保険料控除などを使うことができます。使うことができる控除に関して詳しく知りたい方は、確定申告による節税方法をご覧ください。