定年退職後に、退職金と年金を合わせても老後資金が心配な場合に、シニアでも自宅を担保にしてお金を金融機関から借りられるリバースモーゲージを利用することが増えています。
しかし、一戸建てなら比較的簡単にリバースモーゲージを利用できるのに対して、マンションでは難しいと言われています。この記事では、リバースモーゲージとはどのようなもので、マンションでは難しい理由と、マンションでリバースモーゲージを利用するための条件についてお伝えします。
マンションの売却を全般的に知りたい方は「マンション売却について知ろう!売却の流れや相場情報、注意点を解説」の記事をご覧ください。
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マンションのリバースモーゲージとは
まずは、リバースモーゲージとはどのようなもので、どのような団体が運用しているのか、その種類について詳しく解説します。
リバースモーゲージとは何か
リバースモーゲージとは「リバース=逆」「モーゲージ=抵当・抵当権」の2つの単語を組み合わせた言葉です。日本語にすると「逆抵当権」となります。これは、通常のローンの借り入れの仕組みとは逆の仕組みでお金を借りることを意味しています。
住宅や自動車を購入する時に組む通常のローンは、最初に一括で金融機関からお金を受け取り、そのお金で一括払いで購入するのが難しい住宅や自動車を購入します。そして返済を月々行っていきます。
しかし、リバースモーゲージは自宅を担保にして、毎月ないし一括で借り入れをして、死後に相続人が自宅を売却して一括で返済する仕組みです。
毎月の支払額は元金がなく金利部分のみで済みます。老後の生活資金が足りない場合でも、生活資金に余裕を持ちながら、老後資金を用意できるということで申し込む方が増えています。
リバースモーゲージの種類
リバースモーゲージを取り扱っている機関には2種類あります。1つが金融機関です。もう一つは社会福祉協議会です。
金融機関が取り扱っているリバースモーゲージには、住宅金融支援機構と提携して貸付する場合と、金融機関が独自で行なっているものがあります。元金は借入をした方が亡くなった後で、自宅を売却することで一括して返済します。対象年齢は55歳からとしている金融機関が多く、早期退職したサラリーマンでも利用しやすい点が特徴です。
社会福祉協議会で扱っているリバースモーゲージは、国が運営しているものを、各地域の社会福祉協議会が運用しているものとなります。厚生労働省の生活福祉資金貸付制度による、不動産担保型生活資金に基づいて運用されています。老後の所得が少ない高齢者の生活を支援するために設けられた制度です。原則として65歳以上の市町村税非課税の低所得者世帯や、生活保護世帯が対象です。
マンションだとリバースモーゲージの対象になりづらい理由
夫婦どちらかの名義の不動産を自宅として利用しているのであれば、老後の生活資金を作るためには、とても効果的な方法とも思えるリバースモーゲージです。しかし、マンションではなかなかリバースモーゲージを利用しにくいと言われています。マンションがリバースモーゲージの対象になりにくい理由を解説します。
理由1:リバースモーゲージの対象は基本的に土地の評価額のため
金融機関の多くが、リバースモーゲージの対象を一戸建てのみに限定しています。特に、社会福祉協議会ではマンションを扱っていません。その理由は、リバースモーゲージは土地の評価額で貸付金額を決めることが一般的だからです。
担保の対象にはもちろん建物も入ります。しかし、一戸建てにせよマンションにせよ、建物の評価額は経年劣化によって下がっていく一方です。しかし、土地は活用次第で数十年後でも十分な価値を持つ可能性があります。
分譲マンションでも持ち分割合で幾ばくかの土地を持ってはいます。しかし、1部屋の住人がその土地を自由にどうにかできるわけではありません。そのために、リバースモーゲージの対象からマンションを外している金融機関が多いのです。
理由2:マンションの価値は上がる可能性が低いため
社会福祉協議会の生活資金の貸付制度であれば、リバースモーゲージの対象の不動産から国や地方自治体が利益を得ようと考えることはそれほどないでしょう。しかし、金融機関の場合には、完全にビジネスとしてリバースモーゲージを利用しています。
担保にされる不動産のその後の利用価値も考えなければいけません。リバースモーゲージを利用していた方が亡くなった後で、売却される担保物件の価値がどうなるのかも考える必要があります。
60歳でリバースモーゲージを借りて、80歳で亡くなると20年間、90歳で亡くなると30年間という長い時間がたちます。その間に、一戸建てであれマンションであれ、建物は経年劣化して価値がどんどんと下がっていきます。
短期的にマンションの価格が上昇することはあっても、長期的に見たら右肩下がりで下落していきます。特に日本では築年数がたった建物の金銭的価値が再評価されて上がっていくということはあり得ません。
リバースモーゲージで借りた方が亡くなった後で、一戸建ての土地であれば活用法があっても、マンションは担保を売却しても元金分にならない可能性が高くなります。そのため、マンションではリバースモーゲージは利用しにくいのが現状です。
リバースモーゲージのメリット
ここまで見てきたように、マンションではリバースモーゲージを利用しにくいのが現状です。しかし、一部の金融機関ではマンションをリバースモーゲージの対象としているところもないわけではありません。
どうしても老後の資金繰りを考えたい場合に、マンションであってもリバースモーゲージを利用することには次のようなメリットがあります。
メリット1:相続の時に不動産が遺族の負担にならない
子供が成人して独立した世帯を持っていた場合には、親が亡くなった後で、親が住んでいたマンションの相続をどのようにするのかが、大きな問題となることがあります。
親がリバースモーゲージを利用していたら、親の死後はマンションを売却することで借入金を返済します。もしも借入金よりも売却額が高い場合には、その差額を子供が相続することができます。親の死後に相続人がマンションをどのように売却したり、管理したりそれはいいのかを悩む必要はありません。
また、通常の借り入れでは親の死後に借金だけ残されてしまうこともあり、相続人がその返済に追われることも考えられます。しかし、リバースモーゲージであれば、担保にしていた不動産を売却することで借金を清算できるので、相続人に借金を相続させるという負担も負わせる必要がありません。
メリット2:老後の生活資金に余裕ができる
社会福祉協議会でのリバースモーゲージの制度では、自宅を担保にすることで得たお金の使い道は生活資金に限られています。しかし、金融機関で借入をした場合には、使い道が限定されていません。
旅行費や高齢者施設への入居費に当たることも可能です。リバースモーゲージを利用することで、マンションの評価額によって金融機関が定めた金額まで借り入れることができます。老後の生活資金に余裕ができるというメリットがあります。
メリット3:自宅に住み続けられる
生活資金を得るために自宅を売却することになったら、自宅を出て引っ越しせざるを得なくなります。しかし、ある程度年齢が行ってからの住み慣れた家からの引っ越しは、何かと大変です。最後まで、同じ家に住み続けたいと考える方も少なくありません。
リバースモーゲージを活用すれば、自分が亡くなるまで自宅を手放す必要はありません。その上、自宅の評価額によって借りられるお金を手にすることもできます。
万が一、自宅の名義人の配偶者が先に亡くなった場合でも、ほとんどの金融機関で配偶者への名義替えが可能となっています。配偶者のどちらも亡くなるまで、自宅に住み続けながら、金銭的に余裕のある余生を送ることができる点が、大きなメリットと言えます。
マンションでもリバースモーゲージの対象になる条件
マンションではリバースモーゲージが利用しにくいのですが、絶対にマンションでは利用できないというわけではありません。金融機関によってはマンションでのリバースモーゲージ扱っているところもあります。
しかし、マンションでのリバースモーゲージを扱っている金融機関であっても、全てのマンションをリバースモーゲージの対象としているわけではありません。どのようなマンションがリバースモーゲージの対象となるのか、その条件について解説します。
条件1:資産価値が目減りしにくい物件
金融機関にとってのリバースモーゲージの最終目的とは、借入人の死後に対象の不動産を売却することで利益を得ることです。しかし、現在元気な借入人の寿命がどのくらいあるのかは、誰にもわかりません。
特に、昨今は超高齢化時代です。平均寿命は女性よりも短い男性でも現在では80歳を超えています。リバースモーゲージを利用して60歳で借り入れをしたら、80歳で亡くなってもマンションの売却は20年後となります。
マンションでリバースモーゲージする場合には、20年後もしくは30年後でもある程度の価値を持つ物件でなければいけません。立地などの条件で、20年後、30年後にも資産価値が目減りしにくい物件でなければ、マンションはリバースモーゲージの対象とはなりません。
条件2:築浅の物件
また、リバースモーゲージの対象となるマンションの条件には築年数があります。全ての金融機関で築15年から20年以下となっています。もしくは、借入人が100歳になった時の築年数で、利用できるかどうかを決めている金融機関もあります。
どちらの条件であっても、それ以上築年数がたってしまっているマンションではリバースモーゲージを利用できません。
法的に定められているマンションなどの鉄筋コンクリート造りの建物の耐用年数は47年です。実際の耐用年数は修繕の回数や内容によって、さらに80年程度まで目指すことも可能ですが、法的にはマンションは築47年で価値がなくなるとされています。
金融機関としては、借入人が亡くなった後に売却できるかどうかが問題です。その頃には、建て替えしなくてはいけないというマンションでは、リバースモーゲージを利用できません。
条件3:利便性がよく人気の物件
リバースモーゲージで担保になったマンションは、借入人の死後に売却します。しかし、そのころには築年数が相当たってしまっていることが予想されるので、経年劣化がそこそこ進んでしまっているでしょう。
しかし、ある程度築年数がたったマンションであっても、利便性の高い物件であればよく売れます。マンションが売れるかどうかは、駅からの距離で決まると言ってもいいので、駅からの距離が徒歩10分程度の物件であれば、そこそこの資産価値を保てます。交通の便のいいマンションであれば、金融機関としても売りやすいので、リバースモーゲージを利用しやすくなります。
マンションでもリバースモーゲージが可能な金融機関
マンションでのリバースモーゲージを扱っている金融機関は、次の3つの銀行しかありません。それぞれどのような条件でマンションのリバースモーゲージを扱っているのか解説します。
みずほ銀行
マンションのリバースモーゲージを扱っている銀行の1つ目はみずほ銀行です。みずほフィナンシャルグループ参加の都市銀行で、3大メガバンクの1つの最大手銀行です。みずほ銀行では、次のような条件でマンションでのリバースモーゲージの申し込みができます。目的を明確化すれば金利が安くなります。
リバースモーゲージの対象者 | 55歳以上 |
推定相続人について | 年収120万円以上の推定相続人が確定できること |
融資額 | フリー口:4,000万円 目的口:1億円 |
金利 | フリー口:3.475% 目的口:2.975% |
資金の使い道 | 事業資金、投資、金融資金の購入は不可。その他は自由。 目的口は使い道の確認が必要。 |
担保物件の条件 | 借入人が100歳になるときに築45年以内 専有面積50平米以上 評価額が坪250万円以上、総額5,000万円以上 |
対象地域 | 東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県 |
東京スター銀行
マンションのリバースモーゲージを扱っている銀行には東京スター銀行もあります。東京スター銀行は、1999年に経営破綻した東京相和銀行のあとを引き継ぐ形で2001年に設立された第二地方銀行です。現在は、台湾大手の中国信託商業銀行グループに属しています。東京スター銀行でのマンションのリバースモーゲージの条件は次の通りです。首都圏だけではなく関西でも利用できる点が大きな特徴です。
リバースモーゲージの対象者 | 55歳以上(配偶者は50歳以上) |
推定相続人について | 届け出の必要なし |
融資額 | 500万円~5,000億円 |
金利 | 3.0% |
資金の使い道 | 自由 |
担保物件の条件 | 要問合せ |
対象地域 | 東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪市・京都市・神戸市 |
群馬銀行
群馬銀行は群馬県で展開している地方銀行です。群馬銀行のリバースモーゲージは「夢の続き」と言います。それぞれの地域で活躍している地方銀行の多くが、リバースモーゲージを扱っています。しかし、担保物件としてマンションも可能としているのは、群馬銀行の他にありません。
また、群馬県内だけではなく、他地域でも利用できる点も見逃せません。上記の2行では対象となっていない県も群馬銀行なら対象地域になっています。群馬銀行でのマンションのリバースモーゲージの条件とは次の通りです。
リバースモーゲージの対象者 | 60歳以上 |
推定相続人について | 推定相続人全員の同意が必要 群馬銀行で遺言信託の契約が必要 |
融資額 | 100万円~1億円 担保の評価額の50%以内 |
金利 | 3.475%(変動金利) |
資金の使い道 | 事業資金、投資、金融商品の購入は不可。 それ以外なら自由 |
担保物件の条件 | 要問合せ |
対象地域 | 群馬県・埼玉県・栃木県・東京都・神奈川県・長野県・千葉県・茨城県 |
リバースモーゲージの注意点
リバースモーゲージを利用する上では、注意しなければいけない点があります。申し込む前に理解しておくべき注意点について解説します。
注意点1:不動産の評価額までしか借りられない
それぞれの銀行でリバースモーゲージで融資してもらえる上限額が決まっています。しかし、実際に融資してもらえる金額は、担保にするマンションの評価額によって変わります。全員が最高額を借りられるわけではない点に注意しましょう。
また、担保なので申し込んだ時点のマンションの評価額の全額を借りられるわけではありません。金融機関によって違いますが、評価額の何割までと融資金額は決められています。
注意点2:金利が高く長生きすると返済が必要になる場合も出てくる
老後の生活資金を用意するのに、リバースモーゲージはとても便利な選択肢だと思われています。しかし、金利が高く、毎月の金利の支払いが、家計の負担になる上に、借金の額も最終的にかなりの金額になる点に注意しましょう。
3%の金利で30年間借りた場合には、2倍から3倍に借入額が膨らんでしまう可能性があります。あまり借金の額が膨らみすぎると、存命のうちに増えすぎた借金の一部返済を求められてしまうこともあります。そのころには、すでに介護が必要になっていて、さらにお金が必要な状態になっている可能性もあります。
リバースモーゲージを申し込むときには、 いくらまで借りることができるのか慎重に計画を立てるようにしましょう。
注意点3:推定相続人の承諾が必要なことが
東京スター銀行では必要ありませんが、他の2行では推定相続人の同意が求められます。戸籍謄本での推定相続人の確認が需要の場合もあります。
相続人がマンションを相続したいと考えている場合には、リバースモーゲージの利用に反対される可能性もあります。また、相続人が複数いる場合には、リバースモーゲージの契約時点で細かい相続条件を決めるように求められる場合もあります。
相続人の同意を得たり、相続に関する協議を開くのがめんどくさいということで、リバースモーゲージの利用を諦める方もいます。
まとめ
この記事で見てきたように、マンションでリバースモーゲージを利用するためには、地域が限定されている上に、ハードルがとても高いことがわかります。この記事でご紹介した3つの金融機関が対象地域としてない地域にお住まいの方は、その地域での人気物件のマンションに住んでいたとしても、リバースモーゲージは利用できません。その場合には、生活資金を作るためにその他の方法を選ぶ必要があります。
そのときには、自宅マンションを売却して引っ越すことも選択肢のひとつとなってくるでしょう。今お住まいのマンションがどのくらいの価値を持つのか、まずはイエウールの一括査定で、マンションの評価額を知ることから始めてみましょう。
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