不動産の個人売買をする前に気を付けておくべきことを分かりやすく解説
更新日:2021年3月22日
不動産を個人売買したいんだけど、何を気を付ければよいのか分からず出来ない、という悩みは多くあることだと思います。
この記事では、個人売買のメリットデメリット、リスク、事前準備などを解説していきます。
不動産売却について知りたい方は、 「不動産売却にかかる期間と売却に影響するポイント」 の記事をご覧ください。
まずは「不動産個人売買」に関する疑問を明確にしよう
不動産の個人売買はなかなか聞きなじみがないと思います。そのため、いざ自分の不動産を個人売買するかもしれないという場面になると、様々な疑問が生じると思います。
そこで、まずは自分が不動産の個人売買に対して抱えている疑問を把握して、適切な回答を得ましょう。それこそが、疑問を解消する近道だと言えます。
下のフローチャートをして、自分が今「個人売買」に対してどの状況にいるのか確かめてみましょう。
フローチャートの結果、どの章を参照すれば良いかが分かったら、下の表を基に個人売買に関して解決したい疑問と書かれている内容を確認してみましょう。
まず参照すべき章 | 解決したい疑問 | 書かれている内容 |
---|---|---|
そもそも、不動産を「個人売買」することはどういうことか | 個人売買は法律上可能なのか | |
個人売買が検討できるケース | ||
4章「 不動産を個人売買するメリット・デメリット」 | 個人売買のメリット・デメリットは何か | 個人売買の3つのメリット・個人売買の4つのデメリット |
仲介ではなく個人売買をしたらどのようなリスクがあるか | 個人売買のリスクは何か・それぞれのリスクにどのように対策するか | |
6章「不動産個人売買で必要な事前準備」 | 個人売買をする前に何を用意すればよいか | 個人売買で必要な事前準備は何か・具体的にどのように準備すればよいか |
個人売買をどのようなやり方ですればよいか | 個人売買の8STEPの流れ |
不動産個人売買は法律上可能なのか
ズバリ、不動産を個人間で売買することは法律で禁止されておらず、まったく問題ありません。
そのため、不動産会社を仲介として間に入れなくても個人間で不動産売買をすることは可能です。
そもそも、不動産の個人売買とは、不動産の専門家である不動産会社を間に介さず(仲介なしで)不動産売買を行う行為の事を指します。
不動産売買には専門的な免許や資格が必要だと考えられていますが、個人が自分自身の不動産を売却したり、個人の売主から直接不動産を購入すること自体は違法ではありません。
免許が必要なのは、不動産会社のように業務として不動産売買を行う場合であり、以下のように法律で定められています。
宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行なうものをいう。(出典:国土交通省「宅地建物取引業法」)
不動産会社が業務として不動産売買を行う場合はいくつかの制限や説明義務などが発生しますが、個人売買の場合は制限なく自由に取引を行うことが出来ます。
同様に、個人売買の場合はすべて当事者である売主・買主の自己責任となります。
不動産個人売買が検討できるケース
不動産取引は業者を介して行うことが一般的で、個人売買は珍しく非常に適した状況は限られていると言えます。
不動産の個人売買に適した状況は、売買相手との関係性・売買の対象となる不動産でそれぞれあります。
まず、売買相手との関係性では既に見知っている関係や一定の信頼がおける関係性の場合個人売買に適しているといえます。具体的には、以下のケースがあります。
- 隣人同士で不動産を売買するケース
- 貸している土地を借主に売却するケース
- 親名義で購入した不動産を年月を経て子に名義変更という形で売却するケース
- 相続税対策として子から親に不動産を売却するケース
続いて、売買相手が上記のケースに当てはまらない場合や売買相手がまだ見つかっていない場合でも、売買の対象となる不動産次第では個人売買を検討してみても良いでしょう。
売買の対象となる不動産では資産価値が低い不動産や長らく放置されている不動産などの場合個人売買に適しているといえます。具体的には、以下のケースがあります。
- 築50年以上経過している一戸建てやマンションの一室を売買するケース
- 地方など遠方にある不要な不動産を売買するケース
- 相続して使う予定のない不動産を売買するケース
上記のようなケースに当てはまる場合は、個人売買を検討してみても良いでしょう。
一方で、上記のケースに当てはまらない場合はすぐに方針を切り替え、不動産会社に相談して不動産売買を行うことをおすすめします。不動産会社に査定依頼をして、不動産がいくらくらいで売れそうか査定してもらいましょう。
[ieul_banner]不動産を個人売買するメリット・デメリット
あらためて、個人売買をするかどうか判断するためにも不動産を個人売買するメリットとデメリットを確認していきましょう。
ここでは、3つのメリットと4つのデメリットを紹介していきます。
メリット1:仲介手数料がかからない
個人売買の最大のメリットは仲介手数料がかからないことです。
仲介手数料は、不動産会社に仲介を依頼して不動産売買契約が締結した際に、原則売主・買主双方がそれぞれ仲介を依頼した不動産会社に支払う費用です。
仲介手数料は、売買価格が400万円超の場合以下の式で上限となる金額を計算することが出来ます。
そのため、売買価格によって仲介手数料の上限は以下のようになります。
不動産の売買価格 | 仲介手数料の上限(税込) |
---|---|
500万円 | 231,000円 |
1,000万円 | 396,000円 |
2,000万円 | 726,000円 |
3,000万円 | 1,056,000円 |
4,000万円 | 1,386,000円 |
5,000万円 | 1,716,000円 |
表を見ると、不動産の売買価格が3,000万円であるとき、個人売買を選択することで売主・買主双方が最大100万円以上の費用を節約することが出来ることが分かります。
メリット2:スケジュールを合わせやすい
買主とのスケジュールを合わせやすいことも個人売買のメリットの1つと言えます。
不動産会社を仲介に入れて売買を行うと、日程や時間を合わせて不動産会社と売買を進めていく必要があります。
また、売主と買主が不動産会社の店舗に向かわなければいけないこともあります。そうすると、売主か買主どちらかが時間を確保できずスケジュールが合わない可能性も高まります。
一方で個人売買では、第三者の都合に縛られることなく買主との間で自由なスケジュールを組んで取引を行うことが出来ます。
メリット3:消費税がかからない
売主への直接的なメリットではないですが、消費税がかからないことも個人売買のメリットの1つといえます。
仲介を挟んだ場合も土地の売買には消費税はかかりませんが、建物部分には消費税がかかってしまいます。
一方で、個人売買の場合は建物部分にも消費税がかからないため、購入希望者にとっては同じ売却価格の物件を買う時に、仲介よりも個人売買の方が消費税がかからない分、安く購入することが出来ます。
特に、戸建てよりも建物部分が多いとされやすいマンションを個人売買する場合は、買主に取って意外と大きなメリットになりやすいといえます。
※不動産個人売買でかからない消費税について詳しく知りたい方は、不動産個人売買における消費税の記事もあわせてご覧ください。
デメリット1:購入希望者が見つかりにくい
個人売買のデメリットの1つは、購入希望者が見つかりにくいことです。
知人間や親族間などで既に直接取引をする相手が見つかっている場合は例外ですが、まだ買主が見つかっていない状態で個人売買を検討している方は、これから自分自身で購入希望者を見つける必要があります。
後ほど詳しく紹介しますが、個人売買をしたい方向けのサイトやアプリを用いて購入希望者を募ることは出来ます。ただ、それでも仲介で不動産の購入を検討している人と比べると、母数は少なく、不動産会社と比べても売主の集客力は弱いことがほとんどであるため、購入希望者は見つけにくいと言えます。
そのため、早めに不動産を売りたいという方は、個人売買ではなく仲介を検討したほうが良いかもしれません。
※不動産個人売買と仲介をまだ迷っている方は、不動産個人売買と仲介に関する記事をご覧ください。
デメリット2:売買でトラブルが起きやすい
個人売買ではトラブルが起きやすいというデメリットもあります。
なぜなら、個人売買では売主と買主が不動産取引に対して素人であるためです。知識不足によりミスが起こり、トラブルが起こる可能性が高くなるのです。
また、不動産取引は大きな金額が動くため、ひとつトラブルが見つかってしまうとそのトラブルによって大きな損害を受けてしまう可能性もあります。
一方で仲介では、不動産取引の専門家である不動産会社が経験を活かします。そのため、トラブルは未然に防がれます。
個人売買にどのようなトラブル・リスクがあるのか、詳しくはのちほど解説していきます。
デメリット3:全て自己責任になる
個人売買では、全てのことが自己責任になるというデメリットもあります。
仲介では、不動産会社が業務として不動産売買を行う場合はいくつかの制限や説明義務などが発生しますが、個人売買の場合は制限なく自由に取引を行うことが出来ます。
そのため、仲介では不動産会社が負うべき責任もありますが、個人売買では自由な分全責任を売主や買主の当事者が負うことになります。
実際、以下のように法律でも、免許が必要なのは不動産取引を業務で行う場合であり、個人売買自体は法律上問題ないとされているため、起きたことは全て責任を負い当事者間で解決をしなければいけないのです。
宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行なうものをいう。(出典:国土交通省「宅地建物取引業法」)
デメリット4:時間や手間がかかる
個人売買は取引が完了するまでに時間や手間がかかるということもデメリットといえます。
仲介取引の場合、不動産のプロである不動産会社の担当者が、雑務や資料作り、取引相手との交渉など売却開始から完了までトータルサポートをしてくれます。
ただ、個人売買は仲介とは異なり、アドバイスや売買のサポートをしてくれる存在は自分自身で依頼しない限りありません。加えて、不動産知識がないと手探りで様々な売買手続きをおこなう必要があるため、手戻りが多くなり無駄に手間がかかります。
そのため、結果として個人売買を終えてみると、売却を開始してから半年や1年経ってしまっていた、なんてことも珍しくありません。
不動産個人売買のリスク
不動産個人売買では専門知識がある不動産会社が間に入らないため、様々なリスクが起こる可能性があります。
ここでは、以下3つの不動産個人売買のリスクを解説していきます。
- 契約書に不備が見つかる
- 売却後に不動産の欠陥が発覚する
- 買主都合で交渉途中に破談になる
契約書に不備が見つかる
不動産個人売買を行う際は、契約書に不備が見つかるという失敗がよくあります。専門知識がないまま複雑な決まりがある書類を作成する必要があることが要因です。
本来取り決めておくべき記載事項が抜け漏れていたり、不動産について告知すべきことが抜けていることで後日トラブルにつながります。
抜け漏れやすい記載事項は以下の通りです。
- 買主が支払う手付金の金額
- 手付金を解除することが出来る期日
- 自然災害が発生した場合の負担内容
- 売買する物件を引き渡す際の条件
- 税金の支払いの負担内容
- 契約違反をした場合の解除するかどうかの取り決め
- 通常の記載項目には書ききれない特約
また、売主と買主の権利や義務が記載されていないことで、引き渡し日や残金の支払い日があいまいになり、契約が解除されてしまうというトラブルもあり得ます。
契約書の不備に関する失敗を避けるためには、不動産知識を持つ専門家に書類作成をサポートしてもらうことをおすすめします。
具体的には、弁護士や行政書士など法律に詳しい専門家であれば、売買契約書の作成から契約内容に不備がないかまで確認してくれます。
また、登記手続きを依頼する場合は、あわせて司法書士に依頼することをおすすめします。
※契約書の記載事項をもっと詳しく知りたい方は、不動産個人売買の契約書の記事もご覧ください。
売却後に不動産の欠陥が発覚する
不動産個人売買を行う際は、売却後に不動産の欠陥が発覚するという失敗が起こりやすいです。正確に売買前の不動産状況を確認しないうちに売却してしまうことが要因です。
通常、買主に引き渡した後に見つかった不動産の購入当初には分からなかった瑕疵については、売主が買主に対して責任を負う必要があります。これを、瑕疵担保責任といいます。
ただ、特に個人売買の場合は責任の度合いが大きくなります。個人売買の場合は、特別な定めがなければ、10年間契約不適合責任が課せられます。
不動産会社に仲介を依頼する場合は、慣例では3カ月間となっており、個人よりも責任の負担が少ないです。そのため、瑕疵担保責任の適用期間を売主と買主で取り決めていないと、売主は長期にわたって責任を負う必要があります。
補償や修繕の費用を負担しなければいけない売主はもちろん、購入後に不備が見つかってしまった買主にとっても避けたいトラブルといえます。
売買後に不動産の欠陥が見つかるという失敗を避けるために、宅建士に重要事項説明をしてもらうことをおすすめします。
宅建士とは、宅地建物取引士という不動産に関する国家資格を持つ人のことです。不動産の告知事項や瑕疵などに関する事項を契約前に買主に対して行うことを重要事項説明といいます。
重要事項説明は宅建士の資格を持つ人にしかできません。重要事項説明に使用する重要事項説明書の作成に関しても同様です。宅建士の資格を持つ人が多くいるのは、不動産会社です。
瑕疵のトラブルを避けるためにも不動産会社への仲介依頼を検討してみる価値はあります。仲介依頼を検討する場合は、複数の不動産会社に査定依頼が出来る不動産一括査定サイトがおすすめです。
[ieul_banner]※重要事項説明書に関して詳しく知りたい方は、不動産個人売買の重要事項説明書の記事をご覧ください。
買主都合で交渉途中に破談になる
不動産個人売買を行う際には、買主都合で交渉途中に破談になるという失敗が起きやすいです。原因としては、買主の知識不足で購入に大きな障害に気づきにくいことです。
購入に障害になることは、主に2つあります。
1つ目は、不動産が購入目的を満たせないことです。たとえば、物件を立て替えたいという目的で購入しても法律上立て替えられない物件もあります。再建築不可物件ともいいます。具体的には、建築法上指定された幅4m以上の道路に2m以上土地が接している必要があります。
また、工場を立てたいという目的で土地を購入しても、市街地調整区域に設定されている土地には建てることが出来ません。
そのため、大きな土地を購入して建物を立てたいと考えている買主や、大きくリフォームしたいと思っている買主には、購入目的を聞いたうえで目的通り不動産を使用することが出来るか早い段階で確認しましょう。
2つ目は、個人売買では住宅ローンを組むことができないことです。金融機関による住宅ローンの審査段階で「重要事項説明書」が必要になりますが、個人売買では作成することができません。
重要事項説明書は個人で作成できず、宅地建物取引士の資格を持つ人のみ作成できます。また、作成だけではなく、重要事項説明書の記載内容について説明ができるのも宅地建物取引士です。
金融機関からすると、重要事項説明書がないと物件の概要が把握できず不動産価値の担保が出来ません。不動産価値の担保が出来ないと住宅ローンの融資を行うことが出来ないのです。
そのため、事前に買主が住宅ローンを組んで不動産を購入しようとしているのかどうかを確認するようにしましょう。
※個人売買で注意すべきことを知りたい方は、不動産個人売買の注意の記事をご覧ください。※買主が購入時に住宅ローンを組む場合は不動産個人売買のローンに関する記事をご覧ください。
不動産個人売買で必要な事前準備
不動産個人売買をはじめる前にどのような準備をしなければならないのか、確認していきましょう。
個人売買で必要な事前準備は以下の3つです。
- 困った時の相談先を理解する
- 必要書類を把握する
- 売却にかかる費用・税金を把握する
困った時の相談先を理解する
個人売買では、不動産会社が間に入らないため原則売主と買主だけで取引を行います。
しかし、個人売買をしているとスムーズにいかず困ることが出てくると思います。また、すべて自分でやろうと思うと膨大な時間がかかり取引完了までに時間がかかる可能性があります。
そこで、個人売買のトラブルを回避するためにも個人売買で困った時の相談先を理解しましょう。
相談先 | 概要 | 相談タイミング |
---|---|---|
行政書士 | 売買契約書の作成 | 売買契約時 |
弁護士 | 売買契約書の作成 | 売買契約時 |
宅地建物取引士 | 重要事項説明書の作成・重要事項説明の実施 | 売買契約時 |
司法書士 | 登記の代行 | 登記手続き時 |
表を基に、困った時にどのような専門家に相談すればよいのか、理解しておきましょう。
必要書類を把握する
個人売買では、自分自身で以下の表の書類を集める必要があります。
書類項目 | 概要 | 取得場所 | 使用タイミング |
---|---|---|---|
印鑑 | 実印 | 売主保有 | 契約時・決済時 |
本人確認書類 | 免許証やパスポート等 | 売主保有 | 契約時・決済時 |
印鑑登録証明書 | 捺印する印鑑が実印であることを証明する書類 ※発行後3ヶ月以内のもの | 役所 | 決済時 |
住民票 | 所有権移転登記に必要な書類 | 役所 | 決済時 |
登記済権利証 | 登記名義人の変更 | 役所 | 契約時 |
間取り図と測量図 | 物件情報の確認 | 役所 | 契約時 |
固定資産税納税通知書 | 負担する固定資産税の計算 | 役所 | 契約時 |
境界確認書 | 隣地との境界の場所を確認 ※一戸建て・土地の売買時のみ必要 | 売主保有 | 決済時 |
土地測量図(公図) | 土地の面積等を確認 ※一戸建て・土地の売買時のみ必要 | 法務局 | 決済時 |
マンションの利用規約 | マンションの利用・管理規約を確認 ※マンションの売買時のみ必要 | 売主保有 | 決済時 |
表を基に、それぞれの書類の取得場所や気を付けるべきポイント、使用するタイミングを把握しておきましょう。
売却にかかる費用・税金を把握する
個人売買では、成約時の手数料である仲介手数料はかかりませんが、まったく費用がかからないわけではありません。
不動産個人売買でかかる費用・税金は以下の通りです。それぞれの費用がどれくらいかかるか確認していきましょう。
費用項目 | 概要 | 費用の目安 | 支払時タイミング |
---|---|---|---|
印紙税 | 契約書に課税される税金 | 1000円∼6万円 | 売買契約書の作成時 |
抵当権抹消費用 | ローンを完済して抵当権を抹消するためにかかる費用 | 1000円(司法書士に依頼する場合1万∼5万円) | 移転登記時 |
住宅ローン返済手数料 | ローンの一括返済のために必要な費用 | 5,000円~3万円 | ローン返済時 |
譲渡所得税・住民税 | 売却で得た利益に対してかかる税金 | 短期譲渡所得= 売却益 × 39.63% 長期譲渡所得= 売却益 × 20.315% ※所有期間が5年超であれば長期譲渡所得 | 確定申告後 |
表を基に、どのような費用がいくらくらいかかるのか、いつ支払いが必要になるのかを確認していきましょう。
不動産個人売買の流れ
不動産個人売買の流れを全体的に捉えましょう。個人売買は以下の8つのステップです。
- 不動産の売却相場を確認する
- 売却に必要な書類を揃える
- 価格を決めて売り出す
- 問い合わせ対応・現地調査を行う
- 条件交渉を行う
- 契約書を作成し売買契約を結ぶ
- 決済・引渡しを行う
- 登記手続きを行う
それぞれのステップで何をするのか、確認していきましょう。
STEP1:不動産の売却相場を確認する
おおまかに不動産がいくらで売れるかを確認するために、売主はまずはじめに不動産の売却相場を確認しておきましょう。
実際に過去取引された価格である「成約価格」・現在売り出し中の価格である「売り出し価格」の違いを把握して相場を調べることがポイントです。
また、正確に相場を把握するために、地域の他にも少なくとも「面積・(土地以外の場合)築年数・駅からの距離」の項目が揃った不動産を参考にすることもポイントと言えます。
成約価格を基に相場を調べる方法は主に2つあります。
1つ目は、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」というサイトで調べることです。検索したい期間・不動産の種類・地域を選ぶことで条件に合致する不動産の成約価格が表示されます。
2つ目は、不動産流通機構が運営している「レインズ・マーケット・インフォメーション」というサイトで調べることです。不動産の種類や地域を絞り込むことで、条件に合致する不動産の成約価格や単位面積当たりの単価が表示されます。直近1年の取引情報グラフが表示されることも特徴です。
売り出し価格は不動産総合ポータルサイトで調べることが出来ます。売却予定の不動産と同じ条件で絞り込み検索すると、現在不動産市場で売り出されている不動産の売り出し価格が表示されます。
STEP2:売却に必要な書類を揃える
続いて、売却に必要な書類を揃えましょう。
個人売買と言えども、口約束での契約は避けきちんと書面で契約を結ぶ必要があります。契約には数多くの書類が必要になるうえ、取得までに時間がかかる書類もあるため、早い段階で準備することが大切です。
どのような書類を準備する必要があるのか・手元にない書類がないかなどを確認しておくことがポイントです。
売主が揃えるべき必要書類は以下の通りです。取引する不動産種(一戸建て・土地・マンション)によって変わるため注意が必要です。
- 印鑑
- 本人確認書類
- 印鑑登録証明書
- 住民票
- 登記済権利証
- 間取り図と測量図
- 固定資産税納税通知書
- 境界確認書
- 土地測量図(公図)
- マンションの利用規約
STEP3:価格を決めて売り出す
事前準備が完了したら、価格を決めて売り出しましょう。
手順1で調べた相場を基に、相場と同程度の額~最大でも相場から+5%ほどの価格で売り出すことがポイントです。価格が高すぎると買い手がつきにくいですが、買主からの値下げ交渉があることも珍しくないためです。
知人間や親族間など親しい間柄で個人売買をする場合は事前で話し合って決めることもありますが、サイトを使用して売り出す場合は理想とする売却価格と最低ラインとなる売却価格を考慮したうえで、価格を決めましょう。
不動産個人売買の取引相手となる買主がまだ見つかっていない場合、オンライン上のサイトを使って個人売買を行います。
ここでは、個人売買が出来る以下3つのサイトに関して説明していきます。それぞれのサイトの特徴や、自分が使うのに適しているサイトはどれなのか、などを確認していきましょう。
- 家いちば
- e-物件情報
- 不動産直売所
家いちば
「家いちば」は、いつでも・いくつでも・どんな物件でも、掲載を始めたり、掲載内容を修正できることが出来ることが特徴の掲示板型サイトです。
そのため、売り出し価格が決まっていなくてもとりあえず広告掲載するということも出来ます。
また、契約段階で不動産の専門家によるサポートを受けられる仕組みになっています。そのため、買主を探す段階までは基本的にセルフで行いますが、買主を探した後の手続きは仲介を依頼した場合と同じように取引をすることが出来ます。
物件掲載は無料ですが、基本的な利用料と売買完了時の報酬額がかかります。売主にかかる基本的な利用料は、8万円です。
また、報酬額は通常仲介での不動産売買でかかる仲介手数料の半額であるため、以下のようになります。
売買価格 | 報酬額 |
---|---|
売買価格400万超の場合 | 売買価格の1.5%+3万円 |
売買価格400万以下の場合 | 売買価格の2%+1万円 |
売買価格200万以下の場合 | 売買価格の2.5% |
これらのことから、家いちばは以下のような条件を満たす人に向いているといえます。
- 多少費用をかけてでも安全な取引をしたいと考えている
- 買い手がつかなさそうな不動産を売却しようと考えている
- 掃除や整理などまだ不動産を売る準備が出来ていない
e-物件情報
「e-物件情報」は、物件情報の掲載時に一度料金を支払えば、成約するまで無期限で物件情報を掲載できることが特徴のサイトです。そのため、成約時に費用は発生しません。
また、買主側が任意で売却サポートをするエージェントサービスを付帯できたり、顧客に仲介することを目的に不動産会社が買主になる可能性もあるため、場合によっては有識者が売買に介入してくれるというメリットがあります。
e-物件情報の掲載料は、以下のように物件情報と合わせて掲載できる画像数によってコースが3つに分かれています。
掲載コース | 掲載料(税込) | 画像数 |
---|---|---|
スタンダードコース | 3,300 円 | なし |
シルバーコース | 6,600 円 | 2点 |
ゴールドコース | 11,000 円 | 8点 |
これらのことから、e-物件情報は以下のような条件を満たす人に向いているといえます。
- 仲介手数料をかけずに不動産の個人売買をしたいと考えている
- 時間はかかってもよいので個人売買を完了させたいと考えている
- 不動産知識が乏しく、出来れば専門家に入ってもらいたいと考えている
不動産直売所
「不動産直売所」は、広告掲載~成約まで一切の費用がかからず、無期限で広告掲載が出来ることが特徴のサイトです。
また、掲載できる不動産の用途・種類・規模や個数に制限がありません。
購入希望者からの問い合わせは、サイト経由で掲載時に登録したメールアドレスを基に行われ、その後はメールを基にやり取りをしていきます。
これらのことから、不動産直売所は以下のような条件を満たす人に向いているといえます。
- とにかくお金をかけずに不動産の個人売買をしたいと考えている
- 複数の不動産を所有しており、一度に個人売買で売却したいと考えている
- ある程度の不動産知識があり、専門家によるサポートを必要としていない
※サイトごとの詳しい流れについては、不動産個人売買におけるサイトの記事もご覧ください。
STEP4:問い合わせ対応・現地調査を行う
広告掲載が完了したら購入希望者からの問い合わせを待ちます。
サイトを見た購入希望者からの問い合わせ(メッセージ)を受信したら、返信をして商談を行います。
サイトによっては、メールアドレスや電話番号を明かすことなくサイト内のメッセージチャットでやりとりを完結させることも出来ます。基本的には、購入希望者と日程を調整して現地調査に立ち会います。
現地調査では、不動産の状態を確認しながら購入希望者からの質問にきちんと回答できる状態にしておくことがポイントとなります。サイトに掲載している物件情報だけでは分からない部分が多く、不動産の現地調査が購入意欲に与える影響は大きいからです。
また、購入希望者がエージェントサービスを付帯している場合などは、不動産知識が豊富なエージェントからの質問にも答えられるように手順②で用意した必要書類も念のため持参しておくと良いです。
STEP5:条件交渉を行う
商談や現地調査を経て、購入希望者が正式に購入する決意を固めれば、条件交渉を行います。
条件交渉では、主に売却金額の値下げ交渉が行われます。それ以外にも引渡し時期や付帯設備に関する条件交渉も行う可能性もあります。
プロのサポートがあるサービスを利用した場合などは、購入希望者側から送付される「購入申込書」を介して条件交渉を行うことになります。売主は、購入申込書の内容を確認して申し込みの承認・却下の判断を下しましょう。また、条件見直しの交渉をすることも出来ます。
条件交渉でのポイントは、売却後のトラブルを避けるために確実とは言い切れない条件で交渉をしないことです。たとえば、時間に余裕が無いのに1週間以内に引き渡せますと伝えたり、すべてクリーニングしてから引き渡しますと伝えることなどです。
また、足元を見られて大きすぎる値下げを容認しないように注意が必要です。
STEP6:契約書を作成し売買契約を結ぶ
売主と買主で条件が合えば、売買契約を結びます。売買契約を結ぶ際には、契約書を作成し内容の確認を行います。
個人売買では、基本的に宅地建物取引士による重要事項説明はないため、売主と買主自らが主導で契約書作成・内容確認をする必要があります。
契約書の内容を確認する際には、記載事項に間違いがないか、抜けや漏れがないかをチェックしておきましょう。特に買主の資金調達の方法や、仮に支払いができない場合の対応、税金や取引の際に生じる費用負担をどちらが行うのかの確認が必要です。
また、契約書のひな形に記載できない当事者間の特別な事情については、特約の部分に記載しておきましょう。契約書に定めた内容に応じて取引後の対応も決まるため、契約書の詳細は売主と買主で必ず確認する必要があります。
契約内容に双方が合意したら、売買に必要な書類一式に双方が署名押印をします。居住地が離れている場合は、郵送で対応することも検討しましょう。
STEP7:決済・引渡しを行う
売買契約を締結したら、契約で定めた引渡し日に不動産の引渡しを行います。
買主による代金決済(振込)と同時に物件を引渡します。引渡しでのポイントは、買主と共に不動産の状況や付帯設備の状態が契約書類にある内容と相違ないか確認することです。売主と買主双方が気持ち良い状態で取引を完了させられるように、忘れずに行いましょう。
また、手数料の支払いが必要なサービスを利用している場合は、基本的に同日に支払います。
権利関係の手続きを行って物件を明け渡し、カギの引き渡しを持って売却は終了です。引き渡しは決済日と同日が一般的ですが、契約書に定めた内容次第では、決済後に引き渡しをすることも可能です。
STEP8:登記手続きを行う
決済・引渡しと同日に登記手続きを行います。
原則としては、売主と買主が一緒に法務局に出向いて共同で申請手続きを行います。。所有権移転登記は、自分で行うことも出来ますが基本的に司法書士に依頼して行うことになります。
所有権移転登記が正式に行われないと、買主が不動産を所有している権利を主張することができないため、注意が必要です。
登記は申請してから1週間から10日ほどで登記手続きは完了します。司法書士に依頼する場合は、司法書士から買主に直接登記完了証が送付されます。
※司法書士への依頼方法を詳しく知りたい方は、不動産個人売買の司法書士に関する記事もご覧ください。
もっと詳しく知りたい方は、「「家売ります」は信用できる?個人売買のポイントや注意点」という記事や「投資目的の不動産転売は違法行為なのか?不動産転売で利益を出すコツ」もご覧ください。