不動産売却で税金はいくらかかる?譲渡所得税の計算法と特例を解説!
更新日:2021年4月20日
不動産売却ではどんな税金がかかるのか
不動産売却にかかる税金は印紙税と譲渡所得税です。 譲渡所得税は、住民税と所得税(2037年までは復興特別税を含む)を合わせたもので、売却の翌年に確定申告をして納税をします。 それぞれ解説していきます。
印紙税
印紙税は、売買契約書の作成にかかる税金で、郵便局(またはコンビニ等)で購入できる収入印紙を貼付し納税します。 売買契約書は売主と買主が1通ずつ作成しますので、あなたには1通分の印紙税が発生します。 印紙税の金額は契約価格によって以下のように異なります。 (令和4年3月31日までの間に作成される契約書は軽減税率が適用されます。)
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 60,000円 |
譲渡所得税
不動産の売却では、住民税と所得税を合わせて譲渡所得税と呼びます。 譲渡所得税は、売却で得た利益(譲渡所得)にかかる税金で、税率は所有期間に応じて以下の様になります。 (東日本大震災の復興財源の確保のため、2037年まで所得税と合わせて復興特別所得税が課税されます。所得税の税率に2.1%をかけて計算します。)
所有期間 | 住民税 | 所得税(+復興特別税) | 合計 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 9% | 30%(0.63%) | 30.63% |
長期譲渡所得 | 5% | 15%(9.315%) | 20.315% |
譲渡所得に対して課される税金ですので、売却によって利益が出ていない場合は発生しないので確定申告の必要もありません。 納税のタイミングは、所得税(復興特別税を含む)を確定申告時期(2月16日~3月15日)に、住民税を確定申告後の6月ごろです。 なお、住民税は一括で支払うことも可能ですが、通常6月から4期にわたって徴収されます。
譲渡所得税の計算方法
売却で得た利益を譲渡所得と呼びます。 譲渡所得税は、この譲渡所得にかかる税金ですので、まずは譲渡所得を求める必要があります。
譲渡所得を正しく算出するには、売却金額から取得費(不動産を購入した時にかかった費用)と譲渡費用(売却する際にかかった費用)を差し引く必要があります。
計算の工程
- 取得費と譲渡費用を求める
- 譲渡所得を求める
- 所有期間に応じた税率をかけ税額を求める
計算1:譲渡価格と譲渡費用を求める
取得費と譲渡費用を順番に求めていきましょう。
取得費
取得費は、不動産を購入した際にかかった金額です。 不動産の購入代金はもちろん、契約諸々のための交通費や不動産会社の仲介手数料などが含まれます。(証明する書類が必要) なお、購入代金がそのまま取得費となるわけではありません。 不動産にも寿命があり、近づくにつれ価値は目減りしていきます。 そのため、減価償却分(固定資産の価値を減少させていく会計上の処理)を差しひいて現在の価値を求め取得費とします。
マイホームにおける減価償却費の求め方は以下の通りです。(事業用の場合は計算が異なります。) 又、減価償却をするのは家屋のみで、土地は計算しません。
建物の取得価額は、建物と土地の価格の割合によって決められます。自分の建物価格は、購入時の売買契約書で確認できます。不動産の購入価格が5,000万円で建物と土地の割合が6:4の場合、建物購入価額は3,000万円になります。償却率は、建物構造ごとに設定された法定耐用年数を基に算出されます。
構造 | 償却率 |
---|---|
木造 | 0.031 |
木骨モルタル | 0.034 |
(鉄骨)鉄筋コンクリート | 0.015 |
経過年数は、6カ月以上の端数が出た場合は1年と計算、6カ月未満の端数が出た場合は切り捨てます。 例えば、建物の取得価額が3,000万円の築10年鉄筋コンクリートのマンションの場合、減価償却費相当額は以下の通りになります。
譲渡費用
譲渡費用とは不動産を売却するために直接かかった費用のことです。 例えば以下のようなものが含まれます。
- 土地や建物を売るために支払った仲介手数料など
- 印紙税で売主が負担したもの
- 測量費
- 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうために支払った立退料
- 土地などを売るための建物の取壊し費用とその建物の損失額
- 売買契約締結後、さらに有利な条件で売るために最初の契約者に支払った違約金 ※土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金
- 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など
参考:国税庁「譲渡費用となるもの」
注意点としては、売却に「直接」かかった費用であることです。そのため、以下のような間接的に不動産売却にかかった費用は譲渡費用ではありません。
- 住宅ローンの抵当権抹消のためにかかった費用
- 引っ越し費用
- マンションの修繕費・固定資産税
譲渡費用の目安は、売却価格の7%程度といわれています。 今回は建物が5,500万円で売れたとして譲渡費用を385万円とします。
計算2:譲渡所得を求める
売却金額から取得費と譲渡費用を引いて譲渡所得を求めます。 先ほどの例で計算していきましょう。
計算3:所有期間に応じて税率を掛け合わせる
譲渡所得にかかる税率は売却した不動産の所有期間によって異なります。所有期間は売却した年の1月1日時点で判断されます。そのため、所有期間の計算には注意が必要です。 例えば令和2年中に不動産を売却した場合は、その不動産を取得したのが平成26年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、平成27年1月1日以降であれば「短期譲渡所得」になります。 同様に先ほどの例で計算していきます。 所有期間は10年のため、税率は長期譲渡所得の20.315%です。
譲渡所得税を抑える特例
不動産のような高額な資産の売却では、同様に税金も高額になりやすいものです。 こうした税負担が大きすぎると、一度不動産を勝手しまったらなかなか手放すことができません。 そこで、税負担を大幅に減らす特例が用意されています。 状況に応じた特例を利用することで、譲渡所得税を大きく減らすことができます。 以下では3つの特例を紹介していきます。
- マイホームを売った時の3,000万円特別控除
- マイホームを売った時の所有期間10年越え軽減税率
- 特定のマイホームを売った時の買い換えの特例
- 譲渡損失が発生した場合の損益通算・繰り越し控除
マイホームを売った時の3,000万円特別控除
3,000万円の特別控除とは、課税対象である譲渡所得から最大3,000万円を控除することができる特例です。 言い換えれば、この特例を適用した場合、譲渡所得3,000万円以下であれば非課税になるということです。 この特例が適用されるのは原則、マイホームを売った場合に限ります。 ここでいうマイホームとは、「自らが住むために所有している家屋及びその敷地や借地権」と定義されます。 他にも以下の要件を満たす必要があります。
- 居住している
- 居住しなくなった日から3年後の日が属する年の12月31日までの間に譲渡される
- 取り壊されている場合、取り壊しから1年以内に譲渡契約を結び、居住しなくなった日から3年後の日が属する年の12月31日までの間に譲渡される
- 単身赴任中の場合は、配偶者が住んでいる
また、所有期間10年超の場合の軽減税率とも併用可能です。ただ、不動産売却後に新しく住宅を購入する場合は、住宅ローン控除が適用できなくなります。どちらを優先させるべきかは条件によって異なるため、不動産会社に相談するなどして慎重に決めましょう。 参考:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
詳しくは次の記事をご覧ください。
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マイホームを売った時の所有期間10年超軽減税率
マイホームの定義を満たし、所有期間が10年を超えている場合は軽減税率が適用できます。 所有期間5年を超える長期譲渡所得の税率20.315%ですが、軽減税率の適用により14.21%まで引き下がります。 ただし、譲渡所得6,000万円以上の部分には、通常税率の20.315%が適用されます。
6,000万円以下の部分 | 6,000万円以上の部分 | |
---|---|---|
住民税 | 4% | 5% |
所得税(復興特別税含む) | 10.21% | 15.315% |
合計 | 14.21% | 20.315% |
この特例は、前述した3,000万円特別控除と併用することができるのが特徴です。 参考:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
特定のマイホームを売った時の買換え特例
売却したマイホームの金額より新しく購入するマイホームが高かった場合に適用することができ、売却した際に発生する譲渡所得税を将来に繰り越すことができる特例です。 マイホームの定義は前述と同じですが、適用の条件として10年以上の所有や、前年前々年において3,000万円の特別控除や軽減税率の適用を受けていないことなどがあります。 ここで繰り越された譲渡所得税は、購入したマイホームを売却する際に合わせて課税されます。 参考:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
譲渡損失が発生した場合の損益通算・繰り越し控除
売却金額よりも取得費と譲渡費用の合計が上回った場合は売却により損失が発生したといえます。 こうした売却損が発生した場合も確定申告することで、税負担を軽減させることができます。
損益通算
損益通算は、不動産売却で発生した損失分を別の所得と相殺することができる特例です。 例えば、給与所得500万円のサラリーマンの男性が不動産の売却で1,000万円の売却損が出たとします。 所得金額500万とー1,000万円を相殺することができるので、その年の所得はー500万円となるので本来支払っている税金を抑えることができます。 通常、会社から天引きの形ですでに納税されているので、確定申告でこの特例を利用することで還付金を受け取ることができます。
繰り越し控除
先ほどの例でが、―500万円の売却損が残ったままになっています。 繰り越し控除は、この売却損を最大3年間繰り越すことができる特例です。 今回の場合は、売却損が500万円分残っている形となるため、翌年の給与所得を再び相殺することができます。 相殺後も損失が残るようであればさらに翌年に繰り越されます。
税金がいくらかかるか把握してから売却を進めよう
不動産の売却で利益が出れば、その大きさに応じて税負担も大きくなります。 ですが、各種特例が用意されているため、状況に応じて確定申告を行うことで特例を適用し譲渡所得税を抑えることができます。
そのためには売却を進める前に、およそどのくらいの税金がかかるかを把握しておくといいでしょう。
より確かな税額を計算するには、不動産会社に査定額を算出してもらう必要があります。
ただし、査定価格は不動産会社によって大きく異なるので、必ず複数社から査定を受けて比較するようにしましょう。
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